最近のM&A成約事例
今年の8月に神戸の食品スーパーのM&A案件が成約しました。売り手は、前社長が亡くなり、奥様が現社長でしたが、経営の素人がこのまま社長を継続するのは困難と判断し、スーパーを閉めようとされていました。
買い手の社長は、売り手の前社長と学生時代からの友人で、お互い自分に何かあったら後は任せるという関係だったので、売り手の現社長がスーパーを閉めようとされているのを聞き、買い手候補として手を挙げられました。両者は家族ぐるみの付き合いをされていたので、家族とも面識がありました。
買い手は、買収金額でもできるだけ亡き友人の努力に応えたいという思いがあり、売り手は、後を引き継いでもらえるならありがたいという思いがありました。
売り手と買い手が顔見知りで、直接M&Aしましょう!となったものの次に具体的に何をしたら良いか分からないので硬直状態になってしまうケースが多いですが、本件もそうでした。
売り手と買い手の最大の関心事である売買金額については、顔見知りであるが故にお互い言いづらく、いきなり行き詰まるケースも多いです。そのため、今回のようにやや遅いタイミングで、私のようなアドバイザーにお声がけされることもよくあります。
この案件では、売り手のベテランスタッフも買い手の社長と面識があり、両社のスーパーの立地も近かったため、買い手候補はこの1社に絞られている状態でした。
企業評価について
買い手候補がたくさんあればあるほど、売却希望金額が上がり、買い手候補が1社しかないこの案件のようなケースでは、売却希望金額が下がる傾向にあります。
企業評価の目的は、大きく分けて次の4つですが、中小企業の企業評価は「4.会計上の企業評価」を除いた1~3の企業評価(税務上、M&A用、裁判上)になります。
1.税務上の企業評価
2.M&A用の企業評価
3.裁判上の企業評価
4.会計上の企業評価
この1~3の企業評価は、評価人によって企業評価が大きく変わります。
裁判上の企業評価では、原告側の企業評価と被告側の企業評価では10倍以上の差が出 るケースもあります。
M&A用の企業評価は、裁判上の企業評価ほどではありませんが、売り手と買い手の企業 評価で2倍以上の差が出るケースもよくあります。
そこで、プロの仲介者は落とし所を考えるのですが、私は売り手と買い手が理解しやすい シンプルな企業評価方法での企業評価額を提案しています。
具体的には、時価純資産価額+営業権ですが、時価純資産価額と営業権のそれぞれで高め 低めの評価が可能です。
企業評価のストライクゾーンとして上下で30%ほどの企業評価 額の差が出るイメージです。
この案件では買い手候補が1社しかないため、やや低めの企業 評価額にしました。
この案件で当初、売り手社長が考えたようにスーパーを閉めてしまった場合は、営業権が ゼロになり、閉店に伴う退職金や処分費用等も発生するので、手取額はM&Aに比べてだい ぶ少なくなります。この案件で売り手の手取額は、閉店した場合と比べて約3倍となりまし た。 結果的に買い手は、ややリーズナブルな売買金額で買収でき、売り手は想定外の役員退職 慰労金ももらえて、両社長にとってハッピーM&Aとなりました。
おわりに
顔見知り同士や取引先同士のM&Aが増えてくると仲介者を入れずに直接M&A交渉をスタートするケースも増えてきますが、最後まで当事者だけでやりきれるケースは少ないと思います。
M&A専門会社に依頼すると最低報酬(成功報酬)が2,000万円というケースも多く、気軽にM&A専門会社に依頼しづらい問題もあります。
あまり費用を掛けたくないので直接M&A交渉をしたいという場合は、M&Aの一連の流れの中で、下記部分のみを弁護士や公認会計士等の専門家に依頼して、費用を抑えつつM&Aのリスクを減らすことを検討されたら良いと思います。
1.基本合意契約書の作成
2.買収監査手続
3.最終契約書の作成
なお、売り情報を漏らさないということが、M&Aの最重要テーマなので、スタート時の秘密保持契約書の作成も省略されない方が良いです。
私も所属する神戸商工会議所所属の士業有志で立ち上げた「こうべ企業の窓口」では、複数士業が事業者の皆様をサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。
執筆者ご紹介
公認会計士・税理士 小柴学司(こしば・がくじ)
M&A仲介を20年ほど専門にしており、仲介実績は100件ほどです。M&A用の企業評価は300件ほどの実績です。
1.M&A仲介
2.企業評価
3.買収監査
リオ税理士法人
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