
◆誹謗中傷被害の増加
SNS の普及により誹謗中傷を伴う情報発信が増加しており、個人だけでなく、法人が被害者となるケースも少なくありません。
消費者は商品やサービスを選択するにあたってクチコミ情報を参考にします。また求職者も就職先を選択するにあたってネット上の情報を参考にします。このため、自社に関する誹謗中傷がネット上に存在することが分かった場合、速やかに削除を実現することは事業者にとって極めて重要です。
2025 年 4 月 1 日、「情報流通プラットフォーム対処法」が施行されました。この法律は、プラットフォーム事業者による自主的な削除を通じて、旧法(プロバイダ責任制限法)では難しかった迅速な削除を実現しようとするものです。
◆新法の内容
プラットフォーム事業者は、自社が運営する SNS やクチコミサイトにおいて誹謗中傷を含む発信が行われた場合、これを削除すれば発信者から損害賠償請求されるリスクを負い、削除に応じなければ被害者から損害賠償請求されるリスクを負います。このような状況下では、プラットフォーム事業者が利用規約を定め、利用規約に基づき削除を進めていく形が有効です。
このような考え方のもと、新法は、プラットフォーム事業者に対して以下の義務を課しています。
◇受付方法の公表
被害者が投稿の削除を求めようとしても、申請する方法が分かりにくいケースが多いため、プラットフォーム事業者は、被害申出の方法を定めて公表しなければなりません。
◇遅滞なく調査
削除の申請があったとき、プラットフォーム事業者は、その情報によって申請者の権利が不当に侵害されているかどうか、遅滞なく必要な調査を行うこととされています。
◇専門員の選任
プラットフォーム事業者は、適正な調査を実現するため、専門的な知識経験を有する者を選任しなければなりません。この義務は海外に本社を置く事業者にも課されますので、日本法に詳しくないことを言い訳にすることはきません。
◇申告者への通知
プラットフォーム事業者は、被害者から投稿削除の申出があった場合、必要な調査を行ったうえ投稿の削除をするかどうか判断し、申出を受けた日から 7 日以内に、投稿を削除した場合には削除した旨を、削除しなかった場合には削除しなかった旨とその理由を通知しなければなりません。
◇国への届出
プラットフォーム事業者は総務大臣に氏名・住所等を届け出なければならず、外国事業者は日本国内における代表者等を選任し、その者の氏名・住所等も届け出なければなりません。
◆迅速な削除実現と被害回復に期待
新法において上記義務が課せられる事業者は、大規模事業者として総務大臣が指定したプラットフォーム事業者に限られるため、中小事業者を利用した情報発信については、これまでと同様に迅速な削除対応がなされない可能性があります。
それでも、多くのプラットフォーム事業者が約款を定めて新法に従った運用を開始し、それがスタンダードとなれば、これまで以上に迅速な削除が実現できるケースが増えると予想されます。
まずは、普段お使いの SNS に申告の窓口が明示されているか、確認してみては如何でしょうか。
私も所属する神戸商工会議所所属の士業有志で立ち上げた「こうべ企業の窓口」では、複数士業が事業者の皆様をサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。
執筆者ご紹介
弁護士 高島浩(たかしま・ひろし)
事業の再生手続(私的整理、民事再生)や法人の清算手続(特別清算、破産)を数多く手がけています。また、企業間における商取引やM&Aを巡る契約交渉、債権回収、労働関係紛争、海外進出(中国、東南アジア)に関するご相談も承っております。
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