10月からの給与計算は複雑です/社会保険労務士庄司茂

この時期になると毎年給与計算についての相談が多くなります。今年の相談が多い内容は次のような項目です。

  1. 10月1日から、今年は過去最高の上げ幅となった「最低賃金」への対応。
  2. 毎年9月から見直される社会保険料の標準報酬の変更への対応。
  3. 今年は10月からの雇用保険料率の変更への対応。
  4. 「男性版産休制度」が成立し、10月の育児休業法改正も踏まえた保険料控除への対応。

1.最低賃金への対応

最低賃金は、都道府県ごとに定められる「地域別最低賃金」と「地域別最低賃金」よりも金額水準の高い「特定(産業別)最低賃金」があります。兵庫県の「地域別最低賃金」は10月1日から時間当たり960円となっています。産業や職種に関係なく、雇用形態にも関係なく適用されます。最低賃金の対象となるのは毎月支払われる基本的な賃金なので、最低賃金を計算する場合には、実際に支払われる賃金から以下の賃金を除外したものが対象となります。

【最低賃金の対象とならない賃金】

  1. 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  2. 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  3. 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  4. 所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  5. 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  6. 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

 

また、派遣労働者には、派遣元の事業場の所在地にかかわらず、派遣先の最低賃金が適用されますので、派遣会社の使用者と派遣される労働者は、派遣先の事業場に適用される最低賃金を把握しておく必要があります。

2.社会保険料の標準報酬の変更への対応

毎年、算定基礎届(4月・5月・6月の給与支給総額の報告)により、9月から翌年8月までの標準報酬月額が決定され、それに基づいて保険料を給与から徴収することになっています。保険料は翌月の末に収めることになり、通常は10月の給与から新たに決定した報酬月額により徴収することになります。

3.雇用保険料率の変更

労働者から徴収する雇用保険料が10月1日より変更となり、「一般の事業」の場合は、賃金総額の1000分の5、「農林水産・清酒製造の事業」及び「建設の事業」の場合は賃金総額の1000分6となります。

4.育児休業取得者の保険料控除

育児休業取得者は、月末が育児休業中の場合または月内に14日以上の育児休業を取得した場合は、社会保険料が免除されます。10月1日より「男性版産休制度」が成立し、男性が産後8週間以内に育児休業(出生時育児休業)を2回に分割して取得することができるようになり、その後さらに育児休業として2回に分割して育児休業を取得することができるようになります。このことで最大4回の育児休業にともなう社会保険料の給与からの控除の有無を確認する必要が生じてきます。育児休業期間が短くても社会保険料が免除されることがあります。さらに、賞与については1か月を超える育児休業をしている場合に限り社会保険料は免除されますので、ちょうど1か月の場合には保険料は免除されず、1か月と1日以上の場合には保険料が免除となります。

執筆者のご紹介

社会保険労務士 庄司茂(しょうじ・しげる) 

「人事評価制度導入支援」:頑張った人を評価するシステムづくり、「就業規則作成」:問題社員対策・リスク対応型就業規則の作成、「助成金・補助金申請支援」:厚労省・経産省など、「経営者向け労務管理セミナー」を得意分野としています。

 

  1.人事評価制度導入支援

  2.リスク対応型就業規則作成

  3.助成金・補助金申請支援

 

社会保険労務士法人庄司茂事務所

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