強いリーダーより、”主体的に動く社員”を育てる会社が伸びる理由 ―管理職疲弊を防ぐ“フォロワーシップ力”という考え方/特定社会保険労務士小河みさき

はじめに


「自己完結型の社員が増えている気がする」

中小企業にとって人手不足以上に深刻なのが、“組織がバラバラになる”ことです。

「管理職ばかりが疲弊して、誰も管理職になりたがらない」

「社員がもっと主体的に動いてくれたら…」

中小企業の経営者や管理職の方から、こうした声を聞く機会が増えています。

人手不足が進み、管理職の負担が増す今、企業に必要なのは“強いリーダー”だけではありません。

 

実は今、注目されているのが「フォロワーシップ力」という考え方です。

1. フォロワーシップ力とは


フォロワーシップ力とは、「上司の指示を待つこと」ではなく、“組織成果のために主体的に行動する力”のことです。

つまり、上司の意図を理解し、必要な提案を行い、周囲と協力し自ら考えて動く、そんな“自走して周囲を前進させる社員”の姿勢を指します。

2.リーダーだけが頑張る会社が苦しくなる理由


中小企業では、どうしても社長、幹部、一部のエース社員に負担が集中しやすくなります。すると現場では、「言われていないのでやっていません」とか「自分の仕事ではありません」「前からこうなので」というような空気が生まれます。

この状態になると、どれだけ優秀なリーダーがいても、組織は伸び悩みます。

なぜなら、組織の成果は「リ―ダーの力」×「フォロワーの力」で決まるからです。

従来型組織 フォロワーシップ力のある組織
管理職やスーパー社員が頑張る 一人ひとりが主体的に動く
受け身 提案
指示待ち 協力
他責傾向 改善
成果が人に偏る 組織全体で成果を出す
属人的・限界あり 再現性あり

3.フォロワーシップを発揮できる社員の特徴


フォロワーシップを発揮できる社員には、次のような特徴があります。

 

①当事者意識

「誰かがやる」ではなく、“自分にできることはないか”を考える。

 

② 建設的な意見を言える

ただ反対するのではなく、「こうした方が良いと思います」という提案や「このやり方ならできそうです」と前向きな提案ができる。

 

③ 周囲を巻き込める

 部署や立場を越えて協力し、自分個人よりチームとして出す成果を重視する。

 

④ 上司を支える視点がある

「上司 VS 部下」ではなく、ポジションは違っても“同じ目的に向かっているチームの一員”という視点を持っている。

4.フォロワーシップ力の弱い組織で起こること


さきほどのフォロワーシップを発揮できる社員が少なく、全体としてフォロワーシップ力が弱い組織では以下のようなことが起こります。

  • 他部署批判
  • 責任の押し付け合い
  • 指示待ち
  • 不平不満が多い
  • 「忙しい」「人手不足」が口癖
  • 改善提案がほぼ出ない

そして、「頑張っている人ほど疲弊する」という事態に。例えば、「それ、私の仕事じゃないので」と言われた瞬間、管理職が心の中で折れてしまうケースがあります。

他にも主体的に物事に向き合う人にばかり業務が集まり、周囲との温度差が広がっていった結果、管理職が孤立してパワハラ問題に発展したり、貢献度の高い社員が離職したりして、職場の空気はどんどん悪くなるという悪循環に陥ります。そうなってしまった組織には、目標達成や高い成果は望めません。

ではフォロワーシップ力を向上させるには、どうしたらいいのでしょうか。

5.フォロワーシップは“性格”でも“能力”でもなく“習慣”


結論から申し上げると、フォロワーシップ力は向上させることができます。

フォロワーシップとは、生まれ持った性格ではなく、日々の行動の積み重ねによって育まれる“習慣”です。

そして、その習慣を実践できる状態が「フォロワーシップ力」です。

実際に企業様での研修では、

  • 当事者思考
  • アサーション(建設的な伝え方)
  • 問題解決思考

などを学ぶことで、現場の行動が変わり、現場の空気が変わるケースが多くあります。

つまり、これまでは「知らないだけ」であって、「知って実践」すれば習慣化し、そして組織全体の空気を変えられる、ということです。

特に人手不足に苦しむ中小企業では、「制度」より先に“空気”が成果を左右することも少なくありません。制度だけ整えても、職場の空気が他責的であれば機能しません。

制度は“器”であり、成果を左右するのは、その中を流れる“空気”です。

私たちの行動の多くは、これまでの人生の中で繰り返し続けられた結果、習慣となり、意識せずとも行えるようになっています。それと同じように、フォロワーシップも意識して取り組み続けることで、習慣になっていきます。研修では必ずどうやってPDCAを回し続けられるかを検討していただくようにしています。

上の図はフォロワー(フォロワーシップを発揮する人)の成長段階を表しています。下から上に向かって成長し成熟度が増していきます。習慣化する過程で、依存フォロワーであった人が協力フォロワーに変わり、協力フォロワーは自立フォロワーに変わり、自立フォロワーは主体フォロワーに変化していきます。

変化のスピードは個人差があり、また少しずつ変化するので、組織の中に成熟度の異なる社員が存在することになります。下位より上位の成熟度のレベルに属する社員が多いほど、業務遂行はスムーズになり、チームで成果を上げることが可能になります。

6.最後に


これまで多くの企業で、「うちの社員は変わらない」と言われていた組織が、少しずつ変化していく場面を見てきました。

 

人は、“期待され”“役割を理解し”“行動を承認される”ことで変わり始めます。

フォロワーシップとは、単なるスキルではなく、「組織の未来に自分も関わっている」という感覚を育てることです。

これからの時代は、「強いリーダー育成」だけでなく、“強いフォロワー育成” が企業成長の鍵になります。

ぜひ一度、自社の「フォロワーシップ力」に目を向けてみてはいかがでしょうか。

 

私の所属する「こうべ企業の窓口」は、複数の士業専門家による多角的な視点から、幅広い分野において対応させていただいております。お困りごとはもちろん、ちょっと迷われたときにも、どうぞお気軽にお問い合わせください。

執筆者ご紹介


社会保険労務士 小河みさき(おがわ・みさき)

企業の切実な悩みである「人材育成問題」の解決のために、コミュニケーションの促進やモチベーションアップの施策など組織風土改革の支援、ブラック企業と呼ばれないための社内規則の整備、産業カウンセラーとしてメンタルヘルスへの取組みをサポートします。

  1. 労務管理コンサル(組織開発支援)
  2. メンタルヘルス対策
  3. 社内規定作成

オフィスMirai

〒650-0022 神戸市中央区元町通7-1-2 ネオアージュ神戸元町304

TEL 078-381-6260

[email protected]


皆様へお願い


このコラムをご覧になって、専門家にご連絡される際は「『My法務コラム』を見た」とお伝えいただくと、スムーズです。

宜しくお願いいたします。