中小企業の経営において、設備投資や資金繰りのための「銀行融資」は生命線です。しかし、いざ融資を受けようとした段階で、思わぬ落とし穴になるのが「建物の登記が現況と不一致である状態」なのです。
「未登記」が融資のストップを招く理由
長年事業を続けていると、事業拡大に伴い工場を建て増ししたり、敷地の隅に物置を新築したり、建物を連結して改築したりする、といったことは珍しくありません。しかし、これらの増改築を行った際に、建物の現況を登記簿に反映する「建物表題部変更登記」を行っていないケースが非常に多く見受けられるのです。
銀行が土地や建物に抵当権を設定して融資を行う際、大前提となるのは「登記簿と現況が一致していること」です。もし、登記簿上の建物の床面積は 100 平米なのに、実際には増築して 150 平米になっている場合、銀行はその建物を正確な担保として評価できず、融資実行に「待った」がかかってしまいます。
「固定資産税を払っているから大丈夫」ではない
「うちは増築部分も固定資産税を払っているから大丈夫」と考えておられる経営者様もいらっしゃるかと思いますが、これは誤解です。市町村の固定資産税課は航空写真などで現況を把握し課税しますが、法務局に備え付けられている登記簿は、所有者から登記の申請を行わない限り更新されることはありません。逆に登記簿の表記を現況に合わせる登記の申請を行うと、法務局より市町村の固定資産税課に対し通知がなされることになっています。
「未登記建物」に潜むリスク
古い建物でそもそも「表題登記(新たに登記簿を作製する手続き)」がされていない未登記建物が存在しているケースも要注意です。そのままでは抵当権の設定登記ができないため、急ぎで登記を整える必要に迫られますが、古い建物ほど当時の資料が紛失しており、手続きに時間がかかるリスクがあるのです。
「所有権証明書」集めの難しさ
新築や増築など、建物の床面積が増加した場合における登記手続きに際しては、床面積が増加した部分が、建物所有者の所有であることを確認できる資料となる「所有権証明書」が必要となります。
所有権証明書は、固定資産評価証明書や納税通知書、建築確認済証や完了検査済証、工事業者が発行する引渡証明書などがあり、通常これらの書類のうち複数提示することが必要となるのですが、古い建物だと、これらの書類を紛失していたり、そもそも該当する書類が無い、というケースもあり、そのような場合は、建物を所有していることに相違ない事を第三者に証明してもらう必要があるなど、一層手間がかかってしまいます。
土地家屋調査士を「スピード融資」のパートナーに
登記の不備に気づき、慌てて準備を始めても、測量や書類作成、法務局における登記手続きには数週間の時間を要します。このタイムラグが、事業計画に大きな支障をきたす可能性もあります。
「そろそろ次の融資を」と考えているのであれば、まずは自社の建物の図面と登記簿を照らし合わせてみてください。もしズレがあるようであれば、我々土地家屋調査士にご相談ください。建物の形状や面積を正確に調査・測量し、登記を実態に合わせることで、貴社の資産価値を「いつでも動かせる状態」に整えておく。それが、守りの経営における重要な一歩となります。
私も所属する神戸商工会議所所属の士業有志で立ち上げた「こうべ企業の窓口」では、複数士業が事業者の皆様をサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。
執筆者ご紹介
土地家屋調査士 部屋昇壮(へや・しょうそう)
敷地の境界をはっきりさせたいときや、土地の分割を行う際における土地の調査や測量についての経験が豊富です。また建物については、ほかの同業者があまり取扱わない区分建物(マンション、長屋等)の業務経験も豊富で同業者内での講師実績もあります。どうぞよろしくお願いいたします。
1.土地境界の調査、確認、測量、登記手続
2.建物(普通建物、区分建物)の調査、測量、登記手続
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