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電帳法で必ず対応しなければならないこと/税理士豊見知雄

最近テレビCMなどで「電帳法」という言葉をよく見かけると思います。これは「電子帳簿保存法」を略したものですが、正式には「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といい、帳簿書類のデジタル化について定められています。

この電子帳簿保存法は、大きく3つの項目から構成されています。

● 国税関係帳簿書類の電子保存

ここでいう帳簿(複式簿記の原則に従って記録される仕訳帳や総勘定元帳など)と書類(取引等に関して作成される契約書や領収書など)については、最初から自社でパソコン等を利用して作成したものが対象となります。つまり、作成したデータを原本として保存する制度です。

● 国税関係書類のスキャナ保存

取引先から受け取った書類や自社が交付した書類の控え(決算関係書類を除く契約書や領収書、請求書、注文書など)が対象となり、紙が原本となります。この原本である紙をスキャンしたデータを保存する制度です。

● 電子取引のデータ保存

電子取引(インターネットや電子メールによる取引等)により受け取った、あるいは交付した契約書、注文書、領収書などのデータが対象です。電子取引で授受したデータをそのまま原本として保存しなければなりません。

 

上記の3つのうち、“国税関係帳簿書類の電子保存”や“国税関係書類のスキャナ保存”を利用するかどうかは任意です。

 

また、“電子取引のデータ保存”についても令和 5 年 12 月31 日まではシステム対応遅れ等を理由に、データの保存に代えて紙を出力して保存するこ

とが認められていました。つまり、令和 5 年 12 月 31 日までは特に何の対応をしなくても、従来通り全て紙による保存で問題ありませんでした。

しかし、“電子取引のデータ保存”については令和 6 年 1 月 1 日以降、全ての事業者が必ず対応しなければならない義務となります。

 

電子取引のデータ保存については、<可視性の確保>と<真実性の確保>が必要で、その要件は次とおりです。

<可視性の確保>

① パソコンやプリンタ等を備え付け、画面や書面で整然と速やかに出力できること

② 自社開発プログラムの場合は、そのシステムの概要書を備え付けること

③ 次の検索機能を確保すること

イ.取引の日付や金額、取引先で検索できる

ロ.日付または金額について範囲指定して検索できる

ハ.日付、金額、取引先のうち 2 つ以上の任意の組み合わせによる検索ができる

<真実性の確保>

④ タイムスタンプの付与に関する要件を満たすか、データの訂正等ができないシステムやデータの訂正や削除の履歴が確認できるシステムを利用するか、あるいは、訂正や削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用するか、のいずれかを行うこと

なお、③の検索機能については、税務職員からのデータのダウンロードの求めに応じる場合にはロ.及びハ.の要件は不要となります。また、基準期間(2 期前や 2 年前)の売上高が5,000 万円以下である事業者や、データを出力した書面を整理された状態で提示・提出することができる事業者が、税務職員からのデータのダウンロードの求めに応じる場合には③の検索機能が全て不要となります。

 

電子取引のデータ保存に対応するために、もしシステムを導入すれば当然それなりのコストが生じます。しかし、とりあえずコストをかけずに要件を満たすことができるのは、上記④のうち“訂正や削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用”する方法です。この「事務処理規程」のサンプルは国税庁の HP にワード形式で掲載されていますので、それをダウンロードして利用できます。あとは税務職員からのデータのダウンロードの求めに応じることを前提に、上記③のイ.の検索機能だけ対応しておけば大丈夫です。(③の検索機能が全て不要になる事業者のケースも紹介しましたが、いずれにしてもデータの保存は必須となりますので、日頃から上記③のイ.で対応されることをお勧めします)なお、上記③のイ.についての簡易な方法としては、国税庁の HP に 2 つ紹介されています。

・索引簿の作成

それぞれの電子取引データのファイル名に連番を付して、表計算ソフト等で索引簿を作成し、表計算ソフト等の機能を使って検索する方法

・規則的なファイル名

それぞれの電子取引データのファイル名に規則性をもって「日付、金額、取引先」を入力し、特定のフォルダに保存して、フォルダの検索機能を使って検索する方法

これらの簡易な方法の具体的なイメージも国税庁の HP にありますので一度ご確認下さい。

⇒ 国税庁「電子取引データの保存方法をご確認下さい」

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/pdf/0023006-085_01.pdf

 

ひとまずはご紹介した方法で令和 6 年 1 月 1 日以降の対応は可能です。しかしながら、 帳簿や税務に限らず様々な分野でデジタル化はどんどん進んでいきます。御社の規模拡大 や業務量の増加に伴って、事務処理の効率化という課題に直面した際には、コストをかけてでもシステムの導入が不可欠となるかもしれません。その際には電子帳簿保存法に完全対 応することも検討してみては如何でしょうか。

気になる方は、私も所属する神戸商工会議所所属の士業有志で立ち上げております「こう べ企業の窓口」にお問合せ下さい。複数の士業が連携し、全力でサポートいたします。どう ぞお気軽にご相談ください。 

執筆者ご紹介


税理士 豊見知雄(とよみ・ともお)

 

 経営支援業務(いわゆるMAS業務)に力を入れております。中小企業の社長は日々の業務に追われ、しっかり“経営”に向き合う時間がなかなか取れないことも多々あります。そんな社長にいつも頼られる存在でありたいと思っております。

 

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