中小企業もOKR、中小企業こそOKR/社会保険労務士小河みさき

今回は「人と組織のマネジメント」に有益な情報として、“OKR”をご紹介します。

 

皆様は、自社の従業員についてこのようなお悩みがありませんか?

  • 指示されたことはやっても、それ以上の事には自主的に取り組まない。
  • 人を育てられる管理職が育っていない。
  • やっとの思いで採用した若手がすぐに辞めてしまう。
  • 目標を掲げても達成しようとする意気込みが感じられない。
  • 従業員同士のいざこざや対立があって、雰囲気が良くない。
  • 賃金を上げたり、評価制度を入れたりしたが効果が感じられない・・・など。

まとめると、“従業員が育たず業績が伸びない”という組織の問題ということになります。

この組織の問題を解決するために、貴社ではこれまで日々工夫を重ね、研修や制度づくりに取り組んでこられたのではないでしょうか。

 

もし、これまでの取組みが期待するほどの効果を生んでいないとお感じでしたら、この後のOKRについての説明をぜひお読みください。即効薬ではないですが、少しずつ組織を変え前向きにチャレンジする組織へ変革する手法をお伝えします。

1.OKRとは何か


OKRとは Objectives and Key Results の略称になります。

目標による管理としての組織マネジメント手法で、チームの成長やチャレンジを促進する新しい時代にフィットしたマネジメント手法と言われています。Google がOKRを活用して大躍進したことで有名ですが、日本でもメルカリ、花王、sansan、freee などが導入したことに始まり導入する企業が増えつつあります。

“O”と呼ばれる Objectives は目標と目標が達成された時の状態のこと、誰が(何が)どのようになっていることが望ましいかという問いの答えでもあります。一方、“KR”と呼ばれる Key Results は目標が達成されたことがわかる主要な結果であり、目標をどのように達成しつつあるかをモニタリングする基準です。つまり、“KR”はどのようなことが実現できていたら、“O”を達成したと言えるのかという問いの答えでもあります。

OKRそのものは下図のように非常にシンプルですが、全社でみると最上段に会社OKR、その下に各部門OKR、さらにその下に各チーム(課)OKRと、各部署で作成されツリー状に繋がっていきます。上位のOKRのKRを受けて下位のOKRが設定され、かつ、この繋がりが見える化されることによって、組織と個人の目標が明確になり、全社をあげて最重要課題に全力で取り組めるような仕組みになっています。

2.なぜ中小企業もOKR?


OKRを導入しているのは、大手のIT関連企業だったり、ベンチャー企業ではないか、中小企業には向かないのでは?と思われるかも知れません。変化のスピードの早いイノベーティブな業界においては、高い目標を設定し自社の優位性を確保する経営マネジメント手法としてOKRはもちろん有効だと考えます。だからといって、中小企業には向かないということではありません。その理由は、OKRの持つ、今までの目標管理制度にはない特徴にあります。それはOKRの設定・運用において、常にビジョンを扱うということです。

 

OKRでは単なる数値目標としてではなく、数値目標をありたい姿・なりたい将来像に結びつけて達成するイメージを持つことになります。労働人口の減少、働くことへの意識の変化、価値観の多様性など、組織を構成運営していく上で障害となる様々な課題がありますが、会社のビジョン・方向性・目標と個人の目標・働くことの意味がリンクしていると、人も組織も成長して成果を生み出しやすくなります。これからの時代、従業員ひとり一人に自分事として目標達成に取り組んでもらうためには、この“ビジョンを扱う”ということが非常に大切になるということです。皆で共有した、本当に目指したいと思える、ありたい・なりたい姿のビジョンに向けて何をどうしていくかを考えることは、やらされ感から脱して、自分たちが望んだものに向かって行動を起こすことに繋がります。

 

中小企業にもOKR導入をお勧めする理由を簡単にまとめると、以下のようになります。

  • あまり費用をかけずに始めることができる。
  • チームという小さな単位から始めることができる。
  • 目標管理制度に不慣れでも、少しずつ自社に合った型をつくっていける。

など、リソースの十分でない中小企業であっても取り組むことができます。

 

また主なOKR導入効果としては、

  • 今まで見えていなかった情報を共有し活用するようになり、ムリやムダが無くなる。
  • OKRを通して、お互いをよく理解するようになり、お互いの仕事をスムーズに進めるためのコミュニケーションがとれるようになる。
  • 目標達成に向けて他の従業員の強み、自分の強みの活かし方を考えるようになる。
  • ビジョンと紐付くチームの目標達成に向けた自分の役割を理解し、自らチームに貢献する行動を選択するようになる。
  • チームの目標達成のプロセスにおいて、管理職自身のレベルアップが図られる。
  • 上司と部下、同僚間の人間関係が良好になる

・・・ など。

 

つまり、OKRを導入し運用し続ける結果、業務の効率化や生産性向上が図られ、さらに良質な人間関係が築かれ、人も組織も成長するのです。

OKRは非常にシンプルなフレームだと先述しましたが、単に目標数値だけを扱うのではないところが、従業員のモチベーション維持やエンゲージメント向上に効果を発揮するのだと思います。私達は仕事をするにあたり何が正しいか、どうするのが正解かを考えることには慣れていても、その仕事の先にあるビジョンを描くことにはどうも不慣れなようです。ビジョンを描くことは、何のためにそれをするのか、という目的意識を持つことでもあります。ですからOKR導入後すぐは難しいかもしれませんが、OKRの仕組みを利用してビジョンを描きながら実行し続ければ、どのような組織にも必ず良い変化が起きます。その変化が人を育て、チームを育て、企業の業績向上を導きます。“継続は力なり”、ぜひ良い変化を起こしましょう!

3.まとめ


今回は、人に関することの専門家である社会保険労務士、同時にチームビルディングコンサルタントとして“OKR”について書かせていただきました。

このたびの記事が少しでも貴社の組織マネジメントのヒントになれば幸いです。私共が所属する“こうべ企業の窓口(神戸商工会議所会員の士業有志で構成する任意団体)”では、12 士業の専門家が在籍しております。組織マネジメントに限らず、経営に関すること全般について何かお困りごとがありましたら、ぜひ「経営なんでも相談」をご活用ください。

執筆者ご紹介


社会保険労務士 小河みさき(おがわ・みさき)

企業の切実な悩みである「人材育成問題」の解決のために、コミュニケーションの促進やモチベーションアップの施策など組織風土改革の支援、ブラック企業と呼ばれないための社内規則の整備、産業カウンセラーとしてメンタルヘルスへの取組みをサポートします。

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  2. メンタルヘルス対策
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