社員のライフシフトをバックアップ! 高齢者の真の活躍とは?/社会保険労務士西本恭子

1.日本人の平均寿命は・・

厚生労働省が発表する「令和3年の簡易生命表」によると、2021年の日本人の平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57歳となっており、統計が開始された1948年の平均寿命(男性55.60歳、女性59.40歳)と比較すると26~28年ほど私たちの過ごす人生の時間は、昔よりずいぶん長くなっていると言えます。

2.日本の定年年齢

今後もさらに日本人の平均寿命は今後も伸び続けると見込まれていますが、同時に他国に例を見ないほどの超高齢社会かつ労働力人口が不足していく中を私たちは生き抜いていかなければなりません。

 

一方で、企業に勤める社員の定年年齢を司る高年齢者雇用安定法においては、1998年に60歳定年制が企業に義務付けられ、年金の受給開始年齢に比例して65歳までの継続雇用が義務付けられているものの、記録に残る定年年齢である昭和初期の55歳からはわずか10歳しか伸びていない現状にあります。

3.70歳までの就業機会の確保

このような背景を受け、2021年4月1日から働く意欲がある高齢者が意欲的に働けるような環境の整備を目的として高年齢者雇用安定法が改正されました。

具体的には、定年を65歳以上70歳未満に定めている企業もしくは65歳を限度とする継続雇用制度を設けている企業を対象として、次の5つのうち、いずれかの措置(高年齢者就業確保措置)を講ずることが努力義務となりました。

  1. 70歳までの定年引き上げ
  2. 定年制廃止
  3. 70歳までの継続雇用の導入
  4. 業務委託契約制度の導入
  5. 以下のうちいずれかの制度の導入
    1. 事業主の実施する社会貢献事業への従事
    2. 事業主が資金提供する団体が実施する社会貢献事業への従事

5つの取組のいずれかを努力義務とする今回の法改正については、今後の70歳定年義務化の布石とも言え、自社の定年年齢を見直す企業も多く見受けられます。しかしながら、①から③にある定年年齢等の引き上げとなると、継続雇用が不適格な者も含めた雇用の延長となること、それに伴う人件費の増大など課題で頭を悩ませる企業経営者も多いのではないでしょうか?

今回の改正では、企業に対して雇用によらない措置(「創業支援等措置」)を選択肢として認めており、この④「業務委託」⑤「社会貢献事業への参加支援」については、前述の課題の改善を検討する経営者の方にぜひ活用を模索していただきたい取り組みのひとつとなっております。

4.創業支援等措置の概要

まず、④⑤の取り組みのメリットや課題を確認してみましょう。

*④または⑤を導入する場合は、計画の作成、過半数労働組合等の同意、計画の周知が必要となります。

 

自社で定年に至るまで雇用し続けた社員に対して、定年退職以降の雇用以外の提案を行うということは、企業にとってはハードルが高く感じられるかもしれませんが、健康で働き続けられる社員が今後も増えていく中、雇用という選択肢のみで縛られてしまうと、人件費の増大はもはや避けられないのではないでしょうか。

多様な働き方が求められている中、社員のリタイア後の選択肢もまた多様性が求められているのではないでしょうか。

 

5 高齢者への真の活躍支援とは?

人生100年時代といわれる中で、定年退職後第2の人生を歩むこととなる、自社の社員の顔を思い浮かべてみてください。

在職中に仕事だけを生きがいとしてきた社員が、定年退職後に家庭や地域に居場所が見つけられずに「定年うつ」を発症するケースをよく耳にします。そのような社員を生み出さないためにも、在職時から制度のひとつとして、ライフシフトがスムーズに行える選択肢を示しておく。また、自社のCSR(企業としての社会的責任)の一環として、社員ひとり一人のライフプランを支援することができれば、職場のみに捉われず社員の人生そのものを支援することにもつながり、自社の社員の満足度向上ひいては、企業価値の向上につながるのではないでしょうか。

今号では、高齢者雇用安定法の改正を機とする、自社の高齢社員のライフプラン支援の取組、手段についてご紹介しました。これ以外にも企業価値を高めるための様々な手段についてのご相談は、ぜひ私が所属する『こうべ企業の窓口』へ!

12の専門士業が様々な専門的知見による「経営なんでも相談(初回無料)」で事業者の皆さまの課題解決のお役立ちになりたいと考えています。

「こんな取り組みを始めてみたいけれど、どんなことに注意したらよいのか?」など、ざっくりとしたお悩みでもかまいません。複数士業が各視点で、事業に役立つアドバイスを行わせていただいております。皆様どうぞご活用ください!

執筆者の紹介


社会保険労務士 西本恭子(にしもと・きょうこ) 

判りやすい言葉で、法律と職場での実情との擦り合わせをアドバイスさせていただきます。経営者の方に元気を働く社員をイキイキさせるサポートが得意です。また、ワークライフバランス研修等を得意としております。

1.両立支援

2.各種社員研修

 

社会保険労務士ニシモト事務所

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