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コロナ禍における株主総会運営/司法書士佐藤大輔

司法書士 佐藤大輔 (あなまち司法書士事務所)

政府も、多数が集まる集会などの開催の自粛や延期を求めています。 責任ある企業としては、集会の自粛要請に応えながらも法律通りの手続きを実践する必要があります。

 

1.株主総会延期か、延期せず委任状勧誘し開催するか 

 出席役

 員株主

  数

対応策

 

10人

未満

 

 

 

全株主同意による株主総会省略(書面決議=みなし決議)が出来ないか試す。

通常通り決算後3か月以内に開催する。

通常通り決算後3か月以内に開催する。

書面による議決権行使・委任状出席を勧誘する。

10人を

超える

 

コロナ終焉まで延期する。【1】

決算後3か月以降に定時総会を開催できないときは、新たに議決権行使の

ための基準日を定め、公告したうえ株主総会を開催する(会社法124Ⅲ)

通常通り決算後3か月以内に開催する。

書面による議決権行使・委任状出席を勧誘する。

【1】本当に延期して大丈夫か?!

 

  

 

定時株主総会の開催時期に関する規制

会社法

「事業年度終了後3か月以内に開催せよ」とする規定は存在しません。

各社定

 通常「事業年度終了後3か月以内に開催する」と規定されていることが殆

どです【2】。

【2】「事業年度終了後3か月以内に開催する」と規定している理由

(理由その1)法人税の申告期限が事業年度終了から2か月以内(特別事情あるとき

は3か月以内)とされているからです。

(理由その2)株主総会で議決権を行使することが出来るのは、基準日現在の株主で

あり(会社法124Ⅰ)、株主総会はこの基準日から3か月以内でなければならない

(会社法124Ⅱ括弧書き)とされているからです。

 

 

 

【結論】今回のコロナでの対応

事業年度終了後3か月以内に定時株主総会を行なわなかった場合には、役員は「定款

違反」を犯したことにはなりますが、この非常時にそれをもって責任追及をする株主

は存在しないでしょう。

どうしても気になる場合には、延期後開催される定時株主総会において、延期したこ

との承認を得ておけば問題ありません。

 

延期した総会を招集する前には、基準日の公告をお忘れなきようお願いいたします。

 

先代経営者など物言う株主がいる場合には、毎年株主総会を行なっている時期に、株

主全員に充てて「株主総会延期のお知らせ」を送付しておけば、株主も安心して尚良

いでしょう。

2.株主総会招集通知への工夫

総会受付担当者の負担軽減のために次のような文言を招集通知に記載しておく必要が

あります。

① 状況によっては、会場への入場制限を設ける可能性があること。入場制限の内

容。

② 体温測定に協力いただき平熱ではない場合には、入場制限をする可能性があるこ

と。

③ 体調の悪い方の入場を制限する可能性があること。

④ マスクを着用しない会場への入場は認めないこと。

⑤ マスクをしない出席者には、退場を命じること。

 

3.総会を運営する役員・従業員、株主への配慮

会社には、株主総会に出席する株主、役員、従業員がコロナに罹患しないように配慮

する義務(安全配慮義務)があります。具体的には、次のような対応を行なう必要が

あります。

① 準備段階

 座席を通常よりも間隔を空けて配置する。

 役員、従業員の全員に配布するマスク

 会場設置用の手指消毒液、ドアノブ、マスクの消毒スプレーなど

② 受付段階

 入場制限の実施

 入場に際して、咳や発熱のある株主の入場を拒否すること

③ 総会

 総会時間の短時間化をはかる。

 株主の質問時間は短縮できないため、報告事項など会社側の発言時間を短縮して総

 会を短時間化。

④ 散会・退場

 人混みが出来ないよう、順次誘導すること。

 

★ 紙面の関係上、下記テーマについては、当グループHPをご参照ください。

株主総会の書面結尾(決議省略・みなし決議)

 

書面による議決権行使

委任状出席      
あなまち 株主総会   検索  又は https://is.gd/mFNEr0

 

★コロナ対策についてはこちらをご参照ください。

あなまち コロナ対策   検索  又は https://is.gd/XiTb5x
       

皆様がこの非常事態を乗り越えていく一助になれば幸いです。

執筆者ご紹介


司法書士 佐藤大輔(さとう・だいすけ)

一般的司法書士業務+事業承継・信託・従業員持株会・フランチャイズシステム・M&A等のプラン設計・実行。社長・従業員の法律相談。140万円以下の民事訴訟・示談代行。少額裁判助成制度(兵庫県司法書士会)の利用実績は当事務所が第1位。

  1. 会社法関係のややこしい手続
  2. 登記など普通の司法書士の仕事
  3. 黄金の士業人脈

あなたのまちの司法書士事務所グループ所属

あなまち司法書士事務所

〒657-0044 神戸市灘区鹿ノ下通二丁目4番15号(国道2号線「ナダシン」正面)TEL 078-805-1965

https://www.anamachigroup.com/


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