対応急務!知っていますか?有給休暇の義務化開始/社会保険労務士西本恭子

社会保険労務士西本恭子(社会保険労務士ニシモト事務所)

先般可決成立いたしました「働き方改革関連法」について、企業において様々な対応が求められることになりますが、特に対応が急がれるものの一つとして「有給休暇の義務化」が始まります。
現状の有給休暇の消化率をみてみると、2016 年 1 年間に企業が付与した年次有給休暇(以下「年休」という)日数は労働者 1 人当たり 18.2 日(繰越日数を除く)であり、そのうち労働者が取得した日数は 9 日(繰越日数を除く)と 50%を下回っている現状にあります。(厚生労働省平成 29 年 就労条件総合調査より)
国の指針によると 2020 年までに年休の取得率を 70%にする目標が掲げられており、今回の働き方改革関連法では、こうした年休の取得率を向上させるために今回の改正が行われたと言えるでしょう。
現行の働き方によって異なる法定の年休日数は下記の表の通りとなります。
  (引用:厚生労働省パンフレット)

 

 

今回の改正により、平成 31 年 4 月 1 日より年休の付与日数が 10 労働日以上の労働者に対し、会社は年間(☆基準日=年休発生日、から 1 年間)5 日以上時季を指定して付与しなければならないこととなります。
上記の表に当てはめると、法定通りの年休付与日を基準日とした場合には、週 5 日以
上働く労働者については入社後半年から、同じく週 4 日勤務では入社後 3 年半から、週 3日勤務では入社後 5 年半からが、10 労働日以上の付与日数の発生となり、発生日から 1年の間に 5 日以上の年休消化が必要となります。

例えば、30 年 4 月 1 日入社の正社員は 6 か月後の 10 月 1 日に 10 日年休が発生することとなりますので、30 年 10 月 1 日より 31 年 9 月 30 日までに 5 日の年休を時季指定して与えるといったイメージとなります。
但し、労働者が自ら年休の時季を指定した日数または計画的に付与される日数は除かれます。また、前記表(2)に該当するパートタイマー等労働者であっても、継続勤務年数の経過により 10 労働日以上の年休付与となる労働者はその時点より対象となります。
 
企業の対応策としては、選択肢が 2 つあり、1 つは「計画的付与制度の導入」、または「個別管理にて指定」する方法です。
計画的付与制度とは、会社が従業員と労使協定を結び、各従業員の年休のうち 5 日を超える部分について、時季を定めて年休とする制度です。年休の定め方は、全社一斉や部門ごとまたは個人別に指定することも可能です。業務の閑散期など業務に支障が生じにくい時期に 5 日以上計画的に年休日を定めてしまえば、個別チェックの必要はなくなります。
但し、あらかじめ定めた年休日を会社側の都合で変更することができませんので、労使協議を経ての変更が必要となります。
個別管理にて指定とする場合は、それぞれの基準日から 1 年を経過する前のタイミング(例えば 1 か月前など)で、年休消化が 5 日未満の従業員にアナウンスし消化を促すという管理が必要となります。
また、上記の改正に伴い年休の管理簿の作成と 3 年間の保存義務が定められますので、企業において早急に対応が求められることとなります。
企業としては恒常的な人材不足に対応せざるを得ない社会背景がある中で、業務に支障が及ばないように各自の年休を消化させるため、シフトカレンダーの作成や計画年休制度の導入などが必要となり、互いの事情に配慮しながら年休取得の時季を定めていく事が実務上急務となります。
休暇を取得したことにより生産性に支障をきたさぬように、また単に人件費が増加するという捉え方ではなく、労働者のモチベーションを上げ、生産性向上のための機会と捉えて、今回の改正を後ろ向きに捉えず、年休の活用で職場を活性化させる道筋としていただきたいと思います。

執筆者ご紹介


社会保険労務士 西本恭子(にしもと・きょうこ) 

判りやすい言葉で、法律と職場での実情との擦り合わせをアドバイスさせていただきます。経営者の方に元気を働く社員をイキイキさせるサポートが得意です。また、ワークライフバランス研修等を得意としております。

  1. 両立支援
  2. 各種社員研修

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