働き方改革関連法と中小企業


特定社会保険労務士 城戸 信幸 (城戸社会保険労務士事務所)

 

1. はじめに

 働き方関連法案が、4 月 6 日に上程、6 月 29 日に可決成立、7 月 6 日に公布された。その前後から、「働き方改革関連法」セミナーの講師として東奔西走している。

 この「働き方改革法案案」の主要論点を以下に述べる。

 この法案を読み解くキーワードとしては、「生産性」特に、「労働生産性」の向上、「同一労働・同一賃金」(ただし、実際は、「均等・均衡待遇」)であり、「多様な働き方」の推進と「過重労働」の防止であろう。

 

2. 働き方改革法案の背景

 働き方改革をしなければならない理由は 3 つに分かれる。

理由 1 は、少子高齢化社会への対応である。労働人口は、かなりの勢いで減少しており、有効求人倍率は、執筆段階で、1.63 倍となってしまった。帝国データーバンクによれば、

2018 年前半の人手不足倒産は 70 件とのことだ。

理由 2 は、経済の適切なインフレ率(2%)への誘導である。特に、非正規労働者の賃金が正社員と比べ、6 割に満たず、ヨーロッパ先進国(7~9 割)と比較してかなり低いレベルにあり、消費支出が伸びない大きな原因となっている。

理由 3 は、理由 1、2 とも関連するが、過重労働の防止と余暇の創出にある。

 

3. 中小企業の経営はどうなる

 中小企業には、適用猶予という一定の配慮があるものの、達成を厳しく要求されている。達成できなければ、罰則が適用され、企業名が公表され、人手不足倒産等のリスクが待っている。その意味では、中小企業をふるいかけているようでもある。

 もちろん、労働条件等助成金の拡充、働き方改革推進支援センターの設置等の支援策を打ってくれている。

 多くの企業は、かつて、オイルショック、リーマンショックを乗り切ったように、生き残り、残存者利益を享受できると信じている。

 しかし、中小企業は、可能な限りの手段を用い、乗り切る必要がある。

 働き方法案とは、雇用対策法、労働基準法、労働安全衛生法、労働時間等設定改善法、パート労働法、労働契約法、労働者派遣法という 7 つの法律と行政 ADR の整備から成っている。労働関係法令の 70 年来の大改革ともいわれ、次の 3 本の柱で構成される。

  (1) 働き方改革の総合的かつ継続的な推進を図るため、働き方改革に係る考え方を明らかに

     するとともに、国が「基本方針」を策定する雇用対策法改正・改称

  (2) 長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等を目指す、労働時間に関する制度の見直

     しをする労基法改正、長時間労働をする労働者の健康確保、産業医機能の見直し等を行う

     安衛法改正、勤務間インターバル制度の普及促進等を行う労働時間等設定改善法改正

  (3) 雇用形態にかかわりない公正な待遇の確保を目指し不合理な待遇差を解消するための規定

     の整備を行う、パート労働法、労働契約法、労働者派遣法改正、労働者に対する待遇に関

     する説明義務の強化を図るパート労働法、派遣法改正、雇用確保措置・行政 ADR の整備

     を行う裁判外紛争解決手続きの整備から成っている。

 

 なお、詳細は、今後、労働政策審議会の審議を経て、省令で行われる予定である。

 

 

4. 中小企業が働き方改革を達成するには

 中小企業が働き方改革を実現するため、我々、社労士は、現場に入り、事業主を支援して、従業員の方が働きやすい環境を作る仕組みづくりをする決意がある。現場における職務分析を中小企業が自ら出来るよう助言・指導して業務改善・改革を推進する一助となり、人事制度、賃金制度、人財育成制度、人事評価制度の構築を支援する必要がある。

 中小企業は、高い利用料金を払いシンクタンクに依頼するよりも、社労士の支援を得て、適切な費用で働き方改革を実現できると信じている。身の丈サイズの業務改善・改革で対応できる。

政府も、後述する助成金のほかに、「働き方・休み型改善ポータルサイト」で改善好事例を紹介し、職務分析ツール、職務能力評価基準といった働き方改革をするための各種ツールも厚生労働省関連のホームページからダウンロードできるようにしており、「スタートアップ労働条件」で現状診断もできるようにしている。

 

5. 関連する助成金

 働き方改革を推進するため、助成金が用意されている。助成金は、雇用関係助成金労働条件等関係助成金に分かれている。社労士等の専門家に依頼する費用も該当する。

 働き方改革に関し、関連する助成金を紹介すれば、「時間外労働等改善助成金」、「業務改善助成金」、「人材開発助成金」、「キャリア形成助成金」等があり、今年度も予算がある限り、申請を受け付けるとのことであり、来年以降も継続される予定。

 

6. まとめ

● 働き方改革法案が提出された背景

● 働き方改革と中小企業の経営

● 働き方関連法案とは

● 中小企業が働き方改革を達成するには

● 働き方改革実現のために利用できる助成金 につき、お話ししました。

 

明るく、働きやすく、働き甲斐のある職場を共に築こう !

 

 


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