企業制度としての年次有給休暇制度活用


社会保険労務士 細原次世 (オネスト社労士事務所)

パート労働者にも年次有給休暇(以下「有給休暇」)の取得権利が存在することは知られ る様になってきていますが、それでもいまだに「パートにも有給休暇与えないといけない の?」という質問を受けます。また「人手不足の上に、これ以上休みを取られては敵わない」 という声をよく聞きますが、少し目線を変えることで従業員の定着や育成ひいては「企業の 継続利益」につながる有給休暇制度の活用ポイントをいくつか取り上げてみます。

 

1.そもそも有給休暇の趣旨とは

労働基準法に定める有給休暇の趣旨は、「労働者の心身疲労の回復」と「労働者の労働力 維持」です。だからといって「家の用事のための有給休暇」が否定されるものではありませ んし、傷病で休んだ日を会社が後日有給休暇として取り扱うことは問題ありません。しかし 労働生産性向上のために有給休暇制度を考えるならば、労働者にリフレッシュしてもらう ための休暇であることが重要です。

 

2.付与日数の管理方法

有給休暇の権利は原則入社後6ケ月で発生します。その後有給休暇の取得、また1年ごと に増加した付与日数の発生、権利消滅といった管理が必要になってきます。中途採用が中心 の中小企業では入社時期にバラつきがあるため、有給休暇の付与日数管理に苦労されています。 給与計算ソフトやフリーソフトのエクセルシートでの管理をお勧めしていますが、年に 数回の基準日を設けて、発生時期を統一すると運用しやすくなります。この場合当然、有給 休暇の権利発生時期は6ケ月以内となるケースが生じます。この権利取得時期が早まる期 間は労増基準法を上回る部分となりますので、会社から従業員にアピールできる体制の一 つになります。

 

3.半日単位、時間単位の付与

原則1日単位で付与される有給休暇ですが、1年に5日を限度に半日単位また平成 22 年 労働基準法の改正では、労使協定を前提に時間単位の付与も可能になっています。時間単位 付与はまだまだ制度導入が進んでいませんが、実際に運用してみれば企業側・労働者側にと って利用価値のある制度になっていますので、一度検討の余地があるように思います。

 

4.時季変更権の理解と話合い

有給休暇には、労働者側に時季指定権があり企業側には時季変更権があります。労働者が 休みたい日に有給休暇を請求してくることは当然のことですし、企業側も忙しい時期や代 替要員が確保できないとき、請求時期を変更したいという気持ちも当然です。 具合的に企業側の時季変更権が認められるのは、業務の繁閑・企業規模・代替要員確保の 難易度などを総合的にみて判断されます。 企業と労働者はこの時季指定権と時季変更権を理解することが重要になります。 また互いの権利がかち合わない様に、職種別に時季変更権を行使するケースを整理してお く必要があります。

 

5.計画的付与

有給休暇は、労使協定を前提に有給休暇のうち5日を超える分について、計画的に付与す る方法が認められています。例えば、業務の年間スケジュールを計画しやすい職種などは、 閑散期に計画的に有給休暇を取得してもらうことで、有給休暇と取得してもらうことで取 得率向上につながります。(グループ別付与型)

 

以上何点か取り上げてみましたが、有給休暇制度を企業戦略として組込んでいく企業が 急激に増えてきています。労働者側からみて魅力ある企業となるよう各社様々なアイデア で有給休暇制度を運用し始めています。 企業側にとって労働者に有給休暇を取得されることは「コストである」というマイナスの 認識から、企業と労働者が有給休暇制度を有効活用することをともに考え、結果生産効率が 上がっていくことで「継続利益につながる」というプラスの認識に変化していっています。 


社会保険労務士 細原次世(ほそはら・つぎよ) 

 経営感覚のある事務スタッフの教育、二代目・番頭クラスの育成を得意としています。100%電子申請により手続に係る時間を減らし、育成時間や相談・提案業務に多く時間を充てています。偏りがち中小企業オーナーの労務感覚と法令の調整にも精通しています。

 

  1.中小零細企業の経営労務

  2.番頭・右腕クラスの教育育成

  3.高齢者雇用対策

 

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