皆さんは、「リストラ」について説明して下さい、と言われたら、どの様にご説明されるで しょうか? こんなご時世ですから、大抵の方は、クビ、従業員の削減、あるいは人員整理と説明され るのではないでしょうか? 今回は、その「リストラ」策の一部で資金的なものについて、お話し致します。
【1】「リストラ」の本来の意味
私もこの寄稿に際して、知人に同じ質問をしてみました。 すると、案の定、「人員削減」という期待通りの回答が返ってきました。 この回答は、間違いではありませんが、正解でもありません。 実際、最近は新聞紙上でも大手法人において「何千人リストラによる資金需要のためメイ ンバンクに追加支援を要請」などという記事をよく目にします。 ここでは人員削減という意味で「リストラ」が使われています。 しかし、本来、「リストラ」とは「リストラクチャリング」を略した言葉で、事業の再構築 という意味です。 この「リ」は、英語表記で「Re」であり、「再」ということです。 「リセット」「リスタート」という言葉を思い浮かべて頂くと分かり易いかも知れません。 日本では、「リストラ」という言葉には後ろ向きなイメージがありますが、そんなことはあ りません。 近い将来の経営の安定を目指して、策を講じるという前向きなものです。
【2】資金的な「リストラ」
経営が少し不安定になった場合には、企業の根幹である「ヒト・モノ・カネ」、これらすべ てに再構築がなされます。一言で事業の再構築と言っても、様々な方法があります。 今回は、そのなかで「カネ」、すなわち資金についてのお話しです。 資金繰りについて経営者の頭を悩ませるものは支払、そのなかでもやはり金融機関への返済ではないでしょうか。
例えば、月の支払で全部は払えないが一部なら払える場合、何から優先して払いますか。
1.金融機関への返済
2.公金(税金等)
3.諸経費(買掛金、諸経費)
4.人件費
企業によって多少順位は違うかも知れませんが、たいていはこのような感じでしょうか。 しかし、この順番だと企業の経営活動において、いい人財を失い経営活動の根幹が揺らぐ ことになりますし、取引先の信用を失いあらぬ噂を立てられ、取引さえして貰えなくなる 可能性だって高くなります。こうなると、経営自体立ち行かなってしまう危険性がありま す。 その点、金融機関及び公的機関には、守秘義務があります。もちろん支払わなくていいな んてことはありませんし、返済又は支払が滞ると延滞利息や加算税等は掛かります。 しかし、周囲に漏れることなく非公開で、利害関係者すなわち金融機関の理解を得ながら 事業の再構築の検討をしていくことが出来ます。 これが「リスケ」です。 公金の場合は、自ら納付相談に行かれるのがいいと思われます。
【3】金融機関に対する「リスケ」について
「リスケ」とは、「リ・スケジュール」の略で、私的再建による返済計画の見直しのことで す。 以前、中小企業金融円滑化法が施工されていた頃には、金融機関が国の方針もあり、容易 にリスケに応じてくれていましたが、同法の期限切れとともになかなか応じて貰えなくな りました。そこで、現在では、産業競争力強化法により中小企業向けに新たなリスケスキ ームが作られています。 それが、公的機関である「中小企業再生支援協議会」を活用する方法です。 なお、このスキームにおける中小企業とは、税法における定義と異なり、中小企業基本法 に定められたものをいいます。
中小企業基本法における中小企業をとは、おおまかに次のとおりです。
業種 | 資本金 | 従業員数 |
製造業・建設業 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
このスキームが適しているのは、
・現在本業が下降気味だが、引合いがあり近い将来業績が回復見込み
・副業で損失を出し、その処理で資金不足
・震災の影響をいまだに受けていて、その影響で儲かっている本業に支障が出ている
・運転資金の返済期間を短く設定してしまったため、資金不足
といった窮境状況が軽く、取引金融機関が少ないなどの場合です。 この様な状況下では、このリスケスキームが適しており、経営の安定化に十分に対応可能 であると考えられます。 さらに平成24年5月からは新スキーム(従来スキームは債権放棄等を伴う窮境状況が重 いもの)による実施がおこなわれており、金融機関等も積極的に再生計画を支援していま す。
中小企業再生支援協議会は公的資金が投入されているため、費用負担がありませんし、再 生計画の作成等を支援してくれるので、手続きの煩わしさは一切ありません。 皆さんのお近くでは、神戸商工会議所内に兵庫県中小企業再生支援協議会が設けられてい ます。
お問い合わせ先 兵庫県中小企業再生支援協議会 078-303-5852
再生計画を作成する様な経営状態にならないのが一番いいのですが、最近では経営環境が 目まぐるしく変化しますので、たまたま一時的にそのような経営状態になった場合でも、 企業を継続させて、従業員の生活を保障し、利害関係者に迷惑を掛けない様にしなければ なりません。 業績を回復させるための一方法としてこの「リスケ」をお知りおき頂ければと思います。
舩木俊晴税理士事務所
税理士 舩木 俊晴
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