1.そもそも実用新案権とは
日常生活において、多種多様な商品を購入する場合において「実用新案登録第〇〇〇号」と表示されたパッケージやカタログを見たご経験はありませんか?また、そのようなご経験をお持ちの方のなかには、「この商品には、他にはない優れた点があり、類似商品よりもこっちの方がなんかいい気がする!」と思われ、「実用新案登録第〇〇〇号」と表示された商品に自然と手が伸びたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この「実用新案登録第〇〇〇号」という表示は、その商品に関する技術的なアイデアが特許庁に実用新案権として登録されていることを示す登録表示と呼びます。
「実用新案権」は、「物品の形状、構造、組み合わせに関する技術的なアイデア(考案)」を保護する権利で、例えば、文房具やオフィス用品、日用品等、身近な製品、商品で利用されることも多い権利です。
(身近な登録例)
- シヤチハタ株式会社「Xスタンパー(登録商標):実用新案登録第1120473号」
- 王子ティッシュ販売株式会社(現:王子ネピア株式会社)「軽く押してつぶすことが可能なティッシュ箱」:実用新案登録第1834033号」
- 株式会社アシックス「ビート板」:実用新案登録第2116655号」
- 花王株式会社「クイックルワイパー(登録商標):実用新案登録第2055025号」
2.実用新案権のメリット
①権利取得までの期間が短い
いわゆる無審査制度と呼ばれ、出願すると「方式審査=出願書類の様式審査」と「基礎的要件の審査=保護対象(物品の形状、構造又は組合せに係る考案)かと必要な事項が記されているかの審査」だけが行われ、通常2~3カ月程度で登録が認められます。特許出願の審査で行われる「新規性=今までにない新しいアイデアかどうか」や「進歩性=今までの技術
から容易に考え付くかどうか」の要件については審査されません。これによって、登録表示を早く行うことが可能となります。
→登録表示は、権利者に課される義務ではありませんが、登録表示を行うことで、競合他社に対して権利の存在を明示し、侵害を未然に防ぐ牽制効果を得る事が可能となります。加えて、類似商品にはない優良性を備えた商品であるという印象を消費者に植え付けることが可能となり、これによって、商品の付加価値を上げることが可能となります。
②費用が特許に比べて安価である
出願から登録までにかかる費用の総額(特許事務所に依頼した場合の費用)を特許に比べて抑える(概ね1/2程度に抑える)ことが可能です。
→大企業に比べて資金力に乏しい中小企業にとって活用しやすい権利です。
③ 権利侵害者に対して権利行使を行うことが可能
権利侵害者に対しては、特許と同様に、差止請求や損害賠償請求が可能です。
→但し、特許とは異なり、権利行使について一定の制約があります。こちらは以下のデメリットで説明します。
3.実用新案権のデメリット
① 権利期間が特許に比べて短い
特許権の存続期間は出願日から20年間ですが、実用新案権の存続期間は出願日から10年と特許権の半分の存続期間になります。
② 権利行使に制限がある
実用新案権は、いわゆる無審査制度である為、実用新案技術評価書を提示して警告をした後でなければ、侵害者に対して権利行使することができません。この「実用新案技術評価書」とは、新規性、進歩性等の要件に関して特許庁審査官が作成する評価書で、数字の1~6で評価が出されます。「6」の評価だけが実用新案権の有効性についての肯定的な評価となり、
「6」の評価を得れた場合は、ある程度安心して権利行使を行うことが可能となります。
4.まとめ
世間には「実用新案権は意味がない」という意見をお持ちの方もいらっしゃいますが、実際には「短期間」・「低コスト」で「競合他社への抑止力を保持しながら商品の付加価値を上げることが可能」といった中小企業にとっては実用的且つ魅力的な権利であるいえるのではないでしょうか。
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私も所属する神戸商工会議所所属の士業有志で立ち上げた「こうべ企業の窓口」では、複数士業が事業者の皆様をサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。
執筆者ご紹介
弁理士 羽柴拓司(はしば・たくじ)
特許、実用新案のみならず、意匠、商標等、知的財産のあらゆる分野での対応と総合的なアドバイスが可能です。特許では、機械、装置、プリント配線板、日用品の分野を数多く経験しております。また、知財部門を持たない企業様のサポートを得意としております。
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