皆さんは、日常の業務に生成 AI を活用していますか?
2022 年 11 月に ChatGPT が登場して以来、生成 AI は驚くべきスピードで発達し、私たちの生活や仕事に浸透しつつあります。生成 AI を活用して、メール文の作成、プログラムのコード修正、新規事業のアイデア出し、ブログの挿絵作成など、業務の効率化や売上の向上につなげられます。今回は、その中でも「検索 AI」に焦点を当て、AI 活用のさらなる可能性についてご案内します。
1.従来のインターネット検索と検索 AI の違い
たとえば、知らない地名について調べたいだけなら、Google などの検索エンジンを使えばすぐにわかります。一方で、行ったことのない場所での観光プランを作りたい場合はどうでしょうか。ふつうの検索では「神戸 歴史 観光」「神戸 グルメ」など、いくつものキーワードを変えて検索し、いろいろな Web サイトを行き来して情報を集めます。そのうえで、気になるスポットを選んでプランをまとめるのに時間がかかってしまいます。
しかし、Perplexity などの検索 AI なら、たとえ質問があいまいだったり、長い文章で書いても問題ありません。「神戸の歴史が楽しめる観光プランを教えて」といった直感的な入力で、AI が複数の Web サイトを調べて、数十秒ほどで旅行プランをまとめてくれます。
下の表は、従来のインターネット検索と検索 AI の違いを整理したものです。
従来のインターネット検索 | 検索AI | |
①検索条件の入力 | 「神戸 歴史 観光」など、短いキーワードで検索する必要がある | 「神戸の歴史が楽しめる観光プランを教えて」など、長い文章でも OK |
②情報の探索・選定 | 検索結果から役立ちそうな Webサイトを探し、自分で内容を確認するため、時間がかかることがある |
AI が複数の Web サイトから必要な情報を探してくれる |
③情報をまとめる | 気になる情報を自分で抜き出し、メモしたり文章にまとめたりする必要がある | AI が引用元を示しながら、まとめた文章を自動的に生成してくれる |
上の表にあるように、「神戸の歴史が楽しめる観光プランを教えて」など、知りたいことをそのまま検索 AI に入力してみてください。出てきたプランを見て、「ほかにどんなプランがあるの?」「1 泊 2 日のプランは?」などと聞けば、さらに詳しく答えてくれます。また、「神戸ハーバーランドで人気のグルメスポットは?」といった、深く掘り下げた質問にも対応できます。ビジネスの現場では、検索 AI を使って市場動向を調べたり、競合企業と自社を比べて分析したりすることができます。また、最新のニュースを取り入れたスピーチ用の文章を作成することも可能です。
なお、従来の Google 検索には、②の情報を探して選ぶ仕組みが洗練されているという長所があります。一方、検索 AI はまだ発展途上で、後に説明する注意点もあります。そのため、Google のような検索エンジンと検索 AI を、うまく使い分けるとよいでしょう。
2.主な検索 AI と利用方法
主な検索 AI の特徴を、下の表にまとめました。
perplexity (無料/有料) |
対話形式で質問に回答。結果の出力が早い。 学術論文や動画の検索結果から回答を生成する機能がある。 |
Genspark (無料のみ) |
論理的な思考で質問を解釈し、要約した情報から回答を生成。 調査結果をまとめサイト(Sparkpages)として生成できる。「Autopilot エージェント」により、複雑かつ網羅的な調査や生成された情報の信ぴょう性のチェックができる。 |
Felo (無料/有料) |
対話形式で質問に回答するなど、perplexity に近い仕様と回答結果。 生成した内容からマインドマップやプレゼン資料が生成できる。日本の企業が開発・運営。 |
これら 3 つの検索 AI は、ログインしなくても使えるため、入力窓に質問を入れてボタンを押せば、複数の Web サイトの情報をもとに回答が得られます。また、回答文中の番号をクリックすると、その情報の元になった Web サイトを確認できます。下の画像は、スマートフォンでの perplexity の使い方のイメージです。他の検索 AI もだいたい同じ使い方なので、3 つを使い比べてみるとよいでしょう。
perplexity の場合、ログインすると自分が入力した文章や生成された回答の履歴を残すことができます。また、「Pro Search」と呼ばれる高性能な検索が、1 日 5 回まで可能です。有料プランなら、1 日に 600 回まで高性能な検索が使え、文章や画像の生成 AI も利用できますが、初心者なら無料プランで十分です。
以前の ChatGPT では、インターネット検索機能を使って文章を生成させても、引用元が不明確でした。最近は、ChatGPT の有料プランやブラウザのプラグインの「ChatGPT Search」により、検索 AI と同様に、情報の元サイトを参照しながら回答してくれます。ただし、今のところは、上記の 3 つの検索 AI のほうが情報を探したり選んだりする精度は優れているといえます。
3.注意点
検索 AI を使うにあたって、注意点をお伝えします。
① 信頼性の低い情報が混ざることもある
信頼性の低い Web サイトからも引用する場合があるため、生成された内容が正しい情報かどうか、情報が陳腐化していないか、引用元の Web サイトを確認するようにしてください。
② 出力内容に誤りが含まれる可能性がある
検索 AI は、複数の Web サイトから情報を集めて文章を作りますが、間違った情報を出すこともあります。ほかの文章生成 AI と同様、すべてをうのみにせず、疑問に思ったら別の情報源でも確認してください。
③ 個人情報や機密情報を入力しない
検索 AI に入力したデータは、後で学習などに使われる可能性があります。個人を特定できる情報(名前、住所など)や、社内の秘密情報(取引先情報、ノウハウなど)は絶対に入力しないようにしましょう。
④ 他の生成 AI と使い分ける
もし、単なる文章作成や、文章の添削・要約が必要なだけであれば、従来の文章生成 AI(ChatGPT や Gemini、Claude など)のほうが適しています。検索が必要なときは検索 AI、文章作成のみなら文章生成 AI、といった使い分けをしましょう。
以上は執筆時点(2024 年 12 月 12 日)の情報を基に作成しています。
AI による業務の効率化や売上の向上をはじめ、経営の改善や税務・雇用・労務・法務など、気になる点がありましたら、神戸商工会議所所属の士業有志の「こうべ企業の窓口」にお問合せください。複数の士業が連携し、全力でサポートいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。
執筆者ご紹介
中小企業診断士 稲垣賢一(いながき・けんいち)
これまで2,000以上の事業計画書を見てきた経験から、商品・サービスのアイデアをお客様起点で具体化しながら、経営をよりよくするための計画づくりとその実行・検証を支援しています。
また、青果卸会社のシステム部門などでのパソコン・ITツールの操作の支援やプロジェクトマネージャーの経験から、ITを活用した業務効率化や販路開拓、経営改善を支援しています。
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