弁理士 羽柴 拓司 (海岸通特許事務所)
毎年7月1日は「弁理士の日」というのをご存じでしょうか?
これは、明治32(1899年)7月1日に、弁理士法の前身である「特許代理業社登録規則」が施行され、弁理士の仕事が法律で認められた日であることに由来します。この日を記念して、毎年7月初旬には日本弁理士会の各地域会において様々なイベントが行われます。
しかしながら、「そもそも弁理士って」、「弁理士を活用」と疑問符がつく経営者の方も多いのではないでしょうか。そこで、今回は、「弁理士の職域」や「弁理士の主な登場場面」に触れながら、弁理士を活用して企業力を高める方策についてご紹介します。
1.弁理士の職域について
弁理士は、アイデアや創作物などの「知的財産」の創造から権利化、権利の活用までを総合的にサポートすることができる専門家国家資格)です。
「知的財産」の中で、法律で規定された権利や法律上保護される利益に係る権利として保護されるものを「知的財産権」と呼び、「知的財産権」には、主に、以下のものがあります。
・特許権
発明と呼ばれる比較的程度の高い新しい技術的アイデアを保護
(例)カメラの自動焦点合わせ機能、長寿命の充電池
権利期間:出願日から20年間
・実用新案権
発明ほど高度な技術的アイデアではなく、小発明と呼ばれる考案を保護
(例)日用品の構造や形状の工夫
権利期間:出願日から10年間
・意匠権
物や建築物、画像のデザインを保護
(例)家電製品の外観、レストランの内装、アプリのアイコン画像
権利期間:出願日から25年間
・商標権
自社が取り扱う商品やサービスと、他社が取り扱う商品やサービスとを区別するための文字やマーク等を保護
(例)商品のネーミング、コンビニの店舗についているロゴマーク
権利期間:登録日から10年間(商標権のみ更新が可能です)
~以上4つの権利 日本弁理士会HPより一部引用 ~
2.弁理士の主な登場場面
(1) アイデアの創造時(新商品の企画・開発段階)
新商品などの企画・開発段階において、弁理士が関与して他社の先行調査を行うことで、企画・開発の進むべき正しい方向性を知ることができます。また、従業員が生み出したアイデアの取り扱い等についてもきっちりと規定を整えておくことが可能となります。
→これによって、無駄な開発費の発生を抑えることができます。また、先行調査段階で他社の登録済み権利が見つかった場合には、他社の権利侵害を回避することが可能となり、将来的な紛争を予防できます。更に、従業員のやる気向上にもつなげることができ、企業の活性化を図ることが可能となります。また、弁理士は法律により守秘義務が課されておりますので、安心してご相談頂くことが可能です。
(2)新商品の展示会への出品や販売時
新商品の展示会への出品や販売(以下、公開行為とします)前に弁理士が関与して的確な出願権利を取得するために特許庁に対して行う手続きを済ませておくことで、自らの公開行為に起因して権利が取得できなくなることや、他社による類似の先行出願を防ぐことが可能となります。
→特許権、実用新案権、意匠権は、その出願の時点で新規なものであることが必要です。
よって、たとえ自らの行為であっても、出願よりも前に公開行為を行うと、出願の時点で新規なものではなくなり、権利を取得できなくなります。この点、公開行為の日から1年以内に出願し、且つ、所定の書面を提出すれば、発明等の新規性喪失の例外規定の適用を受けることができ、出願前の公開行為を根拠にして、権利が取得できなくなることを防止できます。但し、公開行為を知って他社が先に関連する出願を行った場合は、それを理由に権利取得できなくなる場合もあるため、公開行為前に出願を済ませておくことが望ましいです。
また、的確な権利範囲を想定した出願書類の作成には専門的な知識が必要となるため、その点からも、この段階において弁理士が関与することの重要性が高いと言えます。
(3)新商品の発売後
新商品の販売後も弁理士が関与することで、自社が権利取得できた新商品に関しては、他社の権利侵害への対応をスムーズに行うことができます。
→権利侵害に該当するかどうかの判断は非常に専門的な知識が必要であり、また対応方法も多岐にわたります。よって、このような場面でも弁理士が関与することで最善の対応策をとることができ、早期解決を図ることが可能となります。
いかがでしたでしょうか?
知的財産の管理部署を備えていない多くの中小企業こそ、弁理士を社外の知財管理者として有効に活用することのメリットが多いはずです!!
是非お近くの弁理士にご相談してみてください。
執筆者紹介
弁理士 羽柴拓司(はしば・たくじ)
特許、実用新案のみならず、意匠、商標等、知的財産のあらゆる分野での対応と総合的なアドバイスが可能です。特許では、機械、装置、プリント配線板、日用品の分野を数多く経験しております。また、知財部門を持たない企業様のサポートを得意としております。
- 知財活用(出願戦略を含む)
- 知財調査
- 知財教育
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