登記しないといけない建物って何だ??/土地家屋調査士部屋昇壮

土地家屋調査士 部屋昇壮(北野合同事務所)

 事務所や工場、倉庫などの建物の新築、増築や一部取壊しなどによる床面積の変更、屋根などの構造の変更、建物の種類(用途)を変更した場合や、建物を取り壊した場合には、建物の登記簿のうち、表題部(建物の種類・構造・床面積など、建物の現況を示す欄)に変更が生じた旨の登記を1か月以内に行わないといけないことになっています。

 

 これは、誰でも請求すれば見ることのできる登記簿の内容が、現況と相違しているにも関わらず一致していると信じることで生じるトラブルを防ぐことが目的であり、融資を受けようとすると、ほとんどの場合は金融機関より登記簿の内容を現況と合致させるための登記を行うよう催促されます。

 

 建物登記簿のうち表題部に記載される事項に関する登記手続きは、土地家屋調査士が代理して申請することができます。ちなみに、建物の権利証(現在は「登記識別情報」といいます。)は、「所有権保存登記」という手続きにて作成することができ、「所有権保存登記」は司法書士が代理して申請することができます。

 

 ただ、建物と言っても、登記をしなければならない建物もあれば、登記をしなくてもよい (登記できない)建物もあるのです。

 建物が登記できるためには、大きな3つの要件があります。まず一つ目に「定着性」、二つ目に、「外気分断性」、最後に「用途性(人貨滞留性)」というものがあります。順番に説明したいと思います。

 

1「定着性」

 建物として登記できるためには、建造物が、地面と強固に接着している必要があります。コンクリートの基礎を設置し建築しているような建物であれば、定着性があるものと認定されますが、ボルトなどで地面と構造物を接続させても、ボルトを外せば簡単に離れてしまうようなものであれば、定着性はなく、建物として登記することはできません。逆に言えば、建築確認を申請しない市販の物置のようなものでも、コンクリート基礎の上に容易に取り外しのできないボルト止めを施し強固に固着した状態であれば、登記すべき建物と判断される場合もあるということです。

 また、この定着性は、単に土地への固着の程度だけではなく、永続して定着しているか否かも考慮する必要があります。例えば、住宅展示場のモデルハウスや、建築現場の詰所のように、その建造物の果たす目的が終了すれば取り壊されることが予定されているようなものは、定着の永続性がなく、建物としての要件を欠くこととなります。

 

2「外気分断性」

 建物として認定されるためには、区画が屋根や周壁などで外気と分断された状態にあることが必要です。ただし、この外気分断性については、建物の種類(用途)によって判断の基準が異なります。つまり、居宅や事務所などの用途の建物においては、屋根や周壁で完全に囲まれた空間であることが要件となるかと思われますが、例えばゴルフの打ち放し練習場のような建造物であれば、打球が飛ぶ方向の壁は開放にしておく必要があるでしょうから、残り3方向の外壁と屋根があれば、建物として認定出来うるということになります。

 また、外気と分断する屋根や周壁は、耐久性のある材質であることが必要です。1、2年程度で張替えを行わなければならないビニールハウスなどは、登記すべき建物として認定できません。

 

3「用途性(人貨滞留性)」

 2の外気分断性で示した、屋根や周壁などで区画された空間が、一定の用に供する空間であることが必要です。例えば、種類を「居宅」として登記しようとする場合には、単に屋根や外壁で囲まれた空間であることのみならず、電気や水道などが敷設され、人が生活するための空間となっていなければならないということです。工場機械の外側に雨風をしのぐために屋根や外壁を設置しただけの建造物は、建造物を含めた全体を機械装置ととらえ、用途性を欠くものとされていますが、内部に事務所や休憩所、倉庫としての用途を併せ備えているようなものであれば、建物として認定される余地はあるかと思われます。

 

 以上、建物として登記すべきか否かの要件について説明させていただきましたが、この判断は、不動産登記法という法律に基づき認定されるものであり、建物を建築できるか否かの判断基準となる建築基準法とは別の法律です。

 建物か建物ではないか、どこまで床面積と認定されるか、などの要件についても不動産登記法と建築基準法で異なります。建築基準法上では床面積に算入されるが、不動産登記法上では登記床面積に除外される、ということもよくあります。

 

 また、上記3つの建物認定の要件は、それぞれ相互に関連するものであり、具体的に建物を認定する場合には、これらの要件を社会通念に照らし、総合的に判断する必要があることから、「会社で建造物を建てたが、これって登記しなければならないのかな?」などの疑問がでてきましたら、お近くの土地家屋調査士にお気軽にご相談してみてください。

執筆者ご紹介


土地家屋調査士 部屋昇壮(へや・しょうそう)

 

 敷地の境界をはっきりさせたいときや、土地の分割を行う際における土地の調査や測量についての経験が豊富です。また建物については、ほかの同業者があまり取扱わない区分建物(マンション、長屋等)の業務経験も豊富で同業者内での講師実績もあります。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 1.土地境界の調査、確認、測量、登記手続

 2.建物(普通建物、区分建物)の調査、測量、登記手続

 

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