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紛争予防による経営力の向上/弁護士森本圭典

弁護士 森本圭典 (かなえ法律事務所)

経営力とは、明確な定義はないと思いますが、あえて言うのであれば、会社が繁盛し、顧客・株主・従業員など、全ての関係者が幸せになることだと思います。

 

弁護士は経営のプロではないため、直接、経営力を向上させる助言をすることは難しいと思います。では、弁護士は、会社の経営力の向上について、どのような形でお役にたてるのでしょうか。

弁護士と言われて、一般的なイメージとして思い浮かぶのは、紛争が生じたときに解決を依頼する人だと思います。例えば、取引先が売掛金を支払ってくれなくて困っている、代金を支払ったのに商品を引き渡してもらえない、会社の業績が悪化してしまい倒産手続を執らざるを得ない、といった場合です。確かに、このような紛争が生じた場合に、解決するのは弁護士の重要な役割です。地方裁判所に提起する裁判について、代理人となれるのは弁護士だけであることからしても、紛争の解決が弁護士の主たる業務であることは明らかです。

しかし、当然のことながら、弁護士は紛争を解決することはできますが、その対価をいただきます。現在、弁護士の報酬は自由化されていますが、多くの弁護士が廃止された旧報酬規程を利用しています。この報酬規程によると弁護士費用は決して安くはありません。例えば、売掛金1000万円の支払いを求める裁判を提起して、1年かけて訴訟を行い、1000万円を回収できたとします。この場合の弁護士費用は、着手金59万円、成功報酬金118万円となり、消費税や実費も合わせると200万円ほどかかります。

1000万円の商品を販売したにもかかわらず、800万円しか入ってこなければ、利益はほとんど残らないどころか、赤字となる場合もあります。1年間かけて裁判を行っても利益がでないのです。

それだけでなく、裁判をするとなれば、証拠を集めてもらったり、弁護士との打ち合わせをする必要もありますので、経営者や従業員の時間が、本業とは関係のないことで削られていきます。

そうすると、紛争が発生してから解決しても、結果として会社の利益は失われますし、従業員も紛争解決のために時間をとられますので生産性が落ちてしまい、加えて、紛争となった取引先との関係も悪化します。つまり、紛争が発生すると、全ての会社関係者が不幸になるのです。

 

最初に経営力とは、顧客、株主、従業員などの全ての関係者が幸せになることだと言いました。全ての会社関係者を不幸にする紛争は、経営力を大きく低下させます。

したがって、経営力を向上するためには、できる限り紛争を避けなければならないのです。

紛争の予防による経営力の向上であれば、弁護士は大いに役立ちます。なぜなら、弁護士は紛争予防のプロだからです。弁護士は様々な紛争事例を知っていますので、どのようにすれば紛争を未然に防ぐことができるのか、その方法も熟知しています。

私が、紛争を予防するための対策を教えて欲しいと質問されたとき、必ずお答えすることが、「書面を作成して下さい」ということです。それも、相手の署名・押印がある書面や相手が作成した書面です。

紛争が生じるのは、いわゆる、水掛け論になっているときです。裁判で争われるほとんどの事件が、両者の言い分を決定づける書面がないため、争いが深刻化してしまったものです。両者の合意内容が書面により明文化されていれば、水掛け論にはなりませんので、これだけ多くの紛争を防ぐことができるのです。

そんなことは当たり前だと思われるかもしれませんが、当たり前のことができていないことがあるため、裁判所に紛争が持ち込まれるのです。

あと、中小企業にとって身近な紛争といえば、従業員との紛争だと思います。残業代や配置転換、解雇など、実際に会社と従業員との争いは多くあります。従業員との争いも、雇用契約書に勤務時間、配転の有無、解雇事由などを正確に定めておくことによって、事前に防げるものがたくさんあります。また、日本の人口は減少しており、高齢化も進んでいることから、今後、従業員の確保は困難になっていくことが予測されます。従業員が頻繁に入れ替わるようでは、従業員の育成、技術の承継が上手く図れず、経営力の著しい低下につながります。

弁護士が経営力の向上にお役にたてるのは、紛争予防です。こんな段階で、弁護士に相談してもよいのかなと悩まれたとき、弁護士は紛争予防のプロですから、紛争が発生する前に相談してよく、むしろ、相談すべきだといえます。相談費用だけであれば、それほどかかりません。

紛争を未然に予防し、経営力を向上させましょう。

以上

執筆者ご紹介


弁護士 森本圭典(もりもと・けいすけ)

弊所は平成元年に開設してから地域に根ざしたリーガルサービスを提供して参りました。生活のなかで生じる様々な問題に取り組み、取り扱った事件の数は多数にのぼります。

  1. 個人の民事・家事事件
  2. 民事事件
  3. 遺産相続

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