勤怠管理の適正化・最適運用について


社会保険労務士 細原 次世 (オネスト社労士事務所)

「働き方改革」では、「時間外労働の上限規制の導入」や「年5日の年次有給休暇の取得」が注目されましたが、労働時間管理の根幹となる「労働時間の客観的な把握方法」についても労働安全衛生法で「労働時間の客観的把握義務」が追加改正されています。

 

(1) 2019年4月改正に義務化された始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法として

 ①使用者が自ら現認することにより確認し、記録すること。

 ②タイムカード、ICカードなどの客観的記録を基礎として確認し、記録すること

 ③上記①・②の方法は難しく、自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置として、主に以下3点を行っていること

  ・自己申告制の対象となる労働者に対して、労働時間の正しい記録方法の説明義務。

  ・管理する者に対して、自己申告制の適正運用を含め正しい記録方法の説明義務。 

  ・自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているかの実態調査。

 

 の3方法が定められました。一般的には②の記録媒体を使用した記録方法が主流に思われれますが、改正以前は、労働時間の自己申告制を採用していた会社は多く、③の措置は、労働者手書きによる時間記録を悪用し、残業代を不支給にしていた会社に対して労働時間の適正把握を促すこととなりました。

 

 この改正の主目的は、会社による労働者の健康管理ですが、会社は、「労働者の勤怠記録」を元に、①労働者の記録、②管理者の記録確認、③給与計算、④会計処理といった流れで経営情報としていく必要があります。この流れの中で、①②の労働時間集計作業を効率的に行い、③の給与計算までスムーズに行うことが労務管理としては重要です。

 

(2) 勤怠記録の把握とその運用の最適化

  社会のデジタル化(DX)に伴って、勤怠管理も変化しつつあります。

  必ずしも勤怠管理のデジタル化が、その会社にとって最適かとは言い切れませんが、導入されていない会社は検討してみる価値が十分にあるかと思います。

 

① 最適化されていない悪い例(客観的記録媒体使用の場合)

   ・タイムカード記録をエクセル等に目視確認、入力集計しているケース

   ・集計機能付きのタイムカード機器の集計機能を利用できていないケース

この2つのケースの問題点は、給与計算時に使用する時間の値(時間外労働時間や深夜労働時間など)の計算に手間暇を掛けすぎている点です。また人間のやることですから計算ミスも発生します。

 

② 最適化されている例(客観的記録媒体使用の場合)

   ・集計機能付きのタイムカード機器の集計機能を利用できているケース

   ・クラウド勤怠管理やPOSシステムにより、勤怠管理者の確認のみで自動集計できるケース

 

 既述のとおり、労働時間の集計作業の効率化が、勤怠管理を最適化運用できる鍵となります。初めの設定にこそ時間はかかりますが、その後のスピード感、正確さ、また集計作業に携わっていた人件費を考えれば、導入は必然的になります。

 

(3) クラウド勤怠管理等導入時の注意点

勤怠管理のシステム導入で、その設定作業が大切であるということは理解頂けたと思いますが、最近の勤怠システムは、様々な設定ができるため、その設定も複雑化しています。費用をかければ勤怠システムを提供している会社からのサポートも十分に受けられますが、やはり重要なのは、会社側にそのシステムを理解できる人材がいるかどうか?ということになります。 

 


執筆者のご紹介

社会保険労務士 細原次世(ほそはら・つぎよ) 

 経営感覚のある事務スタッフの教育、二代目・番頭クラスの育成を得意としています。100%電子申請により手続に係る時間を減らし、育成時間や相談・提案業務に多く時間を充てています。偏りがち中小企業オーナーの労務感覚と法令の調整にも精通しています。

 

  1.中小零細企業の経営労務

  2.番頭・右腕クラスの教育育成

  3.高齢者雇用対策

 

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