3 月末現在、コロナ感染の拡大が予断を許さない状況にあり、首都圏の外出自粛が通知されています。人・モノの移動が制限され、産業社会への影響が不可避の状況です。
会社が取りうるコロナ対策のひとつとして、テレワークがあります。「テレワークとは、情報通信技術を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」(出所:財団法人日本テレワーク協会 https://japan-telework.or.jp/)のことで、多様な働き方を確保することで生産性の向上をめざす方法として以前から研究されてきました。
わかりやすく言えば、「会社に出社せずに仕事することにより、仕事と子育ての両立が可能になり、通勤負担の削減になります」ということが提唱されています。
テレワークは働く場所によって①在宅勤務、②モバイルワーク、③サテライトオフィスの3つに分類されますが、コロナ対策に有効なのは、①在宅勤務です。
コロナ対策としての在宅勤務を実施するにあたり、必要条件があります。それは「会社と従業員の信頼関係」です。
一方で、会社側からよく出る議論として、「目が届かないのをよいことにサボっているのではないか」という疑念です。この立場では在宅勤務は成立しません。なぜなら、そもそも仕事と家庭の併存を認める制度だからです。
IT企業で先駆的な働き方を実践していることで有名な、株式会社サイボウズの代表取締役青野慶久氏は、在宅勤務が機能するポイントとして「仕事を可視化すること」「嘘をつかない、隠さない組織風土」を挙げ、「失敗を詰め、人事評価でマイナスにする文化があると人は嘘をつく」と述べています(出所:令和 2 年 3 月 27 日 日経新聞)。
大切なことは在宅中の生活態度ではありません。仕事の中身です。「在宅勤務で会社が望む仕事は何か」これが最大のテーマです。
相互の信頼関係を維持する努力が必要と申し上げましたが。では具体的にどうすればよいでしょうか?私は以下の3点が重要であると考えます。
①全社で共通認識を持てるよう説明会を開き十分に理解させること
②勤怠管理は厳格な方法を避ける
③業務進捗の透明化に努め、過剰な成果を望まない
在宅勤務は、直接監視を受けずに1人で仕事することが前提ですが、労働基準関係法令(労働基準法、最低賃金法、労災保険法、労働安全衛生法)はすべて適用され、会社には労働時間の把握義務があります(労働安全衛生法第 66 条の 8 の 3)。
提案①は全員を対象としなければ意味がありません。在宅勤務対象外の人から不平不満が出ることになるからです。
提案②には、労働時間把握義務を果たすことが結果として労使の信頼関係を壊すことがないよう配慮する意図があります。具体的には「事業場外みなし労働時間制」(労基法第 38 条の 2)の採用が望ましいでしょう。
事業場外みなし労働時間制とは、実際の労働時間にかかわらず「労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたい時は、所定労働時間労働したものとみなす」(労基法第 38 条の 2 第1項)ということです。
つまり実際は短い時間の労働であっても所定労働時間(例えば 8 時間)労働したことになります。
ただし適用するには下記の条件をクリアしなければなりません。(出所:厚生労働省「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実務のためのガイドライン」)
(1)情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
(2)随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと
ところで上記(2)の「具体的な指示」には当該業務の目的、目標、期限等の基本的事項 の指示は含まれていません。つまり指示して問題ありません。
目的、目標、期限がなければ仕事になりませんから当然必要です。むしろこちらのコミットメントがとても重要になります。
提案③は事業の継続性と生産性向上をめざすため、各企業で工夫することになります。最も重要なことは、会社が適切な目標を与えるための環境整備です。具体的にはクラウドを用いた情報発信と、成果物・レポートの共有、そしてWEB会議のしくみです。さらに情報セキュリティの確保は常時必要です。目先の成果より継続性を重視すべきです。
この苦しい環境が早く和らぎ、皆さまの経済活動が 1 日でも早く取り戻されることを心より祈念致します。
社会保険労務士 西田善知(にしだ・よしのり)
(特定社会保険労務士、日本生産性本部賃金管理士)
会社の文化と理論の統合をめざして社長が自ら語れる制度をつくり、社長の代わり に説明します。社員にいつでも読み合わせできる就業規則を作成します。会社が求 める人材になる為には何が必要かを気付かせる、教育研修を行います。 |
1.人事制度構築、運用指導
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