『見える化』と各種補助金


公認会計士・税理士 宮川靖規(フォレストアドバイザリー会計事務所)

近年、「見える化」という言葉をいろいろなところで耳にします。しかし言葉が抽象的す ぎて何をもって「見える化」なのか、また「見える化」することがなぜ良いのでしょうか。 この点について少し掘り下げて考えてみたいと思います。

 

筆者の見解ですが「見える化」とは「経営計画を自社で立てられるくらい管理の仕組みを 構築すること」だと考えています。筆者は長年、企業再生業務に従事してきました。また優 良企業の経営企画部長を経験してきました。つまり窮境にある企業と優良企業のどちらも 見てきました。その経験から筆者が考えていることは両者の違いは「管理の仕組み」の有無 であると考えています。

 

企業再生の対象となる企業に共通して言えることは、どの商品が儲かっているか、どのエ リアで商品がよく売れているかなどの情報がデータとして蓄積されておらず、勘に頼らざ るを得ない経営を行っているということです。またある程度の規模の企業では購買、製造、 販売などの連携がとれておらず、なおかつそれぞれの部門の意見が整合していないという 特徴があります。これらは共通した物差しがないまま経営を続けており、誤った意思決定と 正しい意思決定がその都度行われ、外から見れば業績が安定していないように見えていま す。

 

一方で優良企業はその企業にとって最も重要な指標(KPI:Key Performance Indicator、 重要業績評価指標)がはっきりしており KPI を中心とした各種経営指標がリアルタイムで 分かる仕組みが確立され、末端の社員まで KPI を意識した経営を行っています。この結果、 間違った意思決定を行ってもすぐに問題点に気づくことができ、改善案を実行することが できるため外から見れば常に増収増益に見えます。

 

この KPI はどの企業にも存在すると考えられますが、100 社 100 様ですので、KPI は企業 の数だけあると思っても差し支えないと考えています。つまり業績不振の企業であっても KPI は存在するのですが、それを数値化するだけのデータの蓄積がないため結局は勘に頼る 経営になってしまっていると考えられます。しかし、どのような経営不振企業の社長に伺っ ても「この数値が大事」という目星はついており、結局はデータを蓄積しているか、してい ないかの差だけであるように思われます。 また、中小企業でよくみられるのは長年の経験により社長の頭の中がスーパーコンピュ ーターとなっており、KPI やデータの蓄積は社長の頭の中に存在しているというパターンです。しかし近年は事業承継といわれる会社の代替わりが社会問題となっており、後継者の頭 の中には長年の経験により培われた先代社長のようなスーパーコンピューターは存在しま せん。だからこそ、数値を使った管理の仕組み=「見える化」が必要となっていると思われ ます。幸いにも IT 化やコンピュータ-の発達によりデータの収集、加工は一昔前と違って 容易に行うことができます。今こそが管理の仕組み=「見える化」を行う絶好の機会ではな いでしょうか。

 

一方、「ものづくり補助金」「IT 補助金」といった補助金には必ずと言っていいほど経営 計画の提示が求められています。しかも補助金は募集から締め切りまで数か月しか期間が ありません。つまりいつでも説得力のある経営計画が提出できる準備のある会社が補助金 を受けることができます。これは国から中小企業に対して「経営計画をいつでも作れるくら い管理の仕組みを作りこんでください」というメッセージであると筆者は考えています。

 

もちろんビジネスは数字だけでなく、社長の経営者としての資質、製品の性能や現場の雰 囲気なども非常に大事です。しかしビジネスはこれらのヒトやモノと数字が車の両輪のよ うに動いて初めて正常に機能するものと考えています。事業承継後の企業や規模がある程 度大きくなってきた企業にとって適切な管理の仕組みは不可欠のものと考えられます。

 

大手企業はいくら優秀な経営者であっても管理の仕組みがなければ成り立ちませんので、 自社用にカスタマイズしたシステムを持っています。何も大手企業と同じことをする必要 はありません。大手企業の管理システムのエッセンスを中小企業用に作り変えることによ りそれぞれの企業に適した管理の仕組みを構築することは可能です。これにより経営意思 決定の精度は上がり、業績は安定的に拡大していくものと考えられます。

 

是非、国の後押しに乗り、管理の仕組みの構築、及び適切な KPI の設定を行い安定した業 績と各種補助金を手に入れていただきたいと思います。 


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