「コロナ禍における経営戦略について」


中小企業診断士 赤部 佳夫 (有限会社 実践マーケティング研究所)

 

・兵庫県・大阪府・京都府において、425日より、3回目の「緊急事態宣言」が発出され、市民に対し、不要不急の外出に対する自粛が政府より要請されました。

・結果として、飲食業や観光業、有店舗型の小売業やその関連企業を取り巻く経営環境の悪化が長期化する様相を見せつつあります。

・そこで、今回は、外部環境の変化に合せて、自社の経営戦略の見直しをどう図っていくのか、その基本的なステップについて、お話をさせていただきます。

 

STEP-1 可能な範囲で年後の経営環境を予測する

 

 ・企業を取り巻く経営環境の変化に関しては、現実として、半年先でさえ、その予測は困難 

  です。では、今、生き残りを図ることだけを考えて、対応を図ることが適切でしょうか。

 ・例えば、飲食業であれば、配達サービスを行うことにより、売上の減少分を少しでも取り戻 

  そうという考え方は、間違いではありません。

 ・しかし、安易に600円の商品に配達料を加算し、1000円で販売した結果、利用顧客か  

  ら見れば、「1000円で、この内容では物足りない」という印象を残すリスクが発生しま

  す。最悪の場合、「店舗で提供されるメニューもあまり期待できそうにない」と判断され、 

  潜在顧客の開拓に関して、逆効果になる可能性もあります。

 ・したがって、飲食業を例にあげると、

  ①今後、コロナ対策の普及に時間がかかった場合、宴会需要は拡大するのか、縮小するのか  

  ②今後、所得の格差が拡大した場合、自社への影響はどうなるのか

  ③ネットを活用した惣菜商品の需要は、今後も拡大していくのか

  など、自社の業界に影響が考えられる変化に絞り込んで、3年後の環境変化を予測してみる  

  ことが有効です。インバウンド客はいつ回復するのか等、予測が困難な項目は一旦、除外

  し、近隣または広域に実在する来店客か無店舗利用客などの切り口で、影響のありそうな項

  目の変化を考えてみましょう。

 

STEP-2 自社の強みの再定義を行う

 

 ・前ステップで考えた環境変化を踏まえて、3年後に通用する自社の強みを再定義しましょ

  う。コロナ禍以降、生活者の意識や消費行動も変化し、以前の行動に戻らない場合を想定

  し、新たな需要を創造していく視点が重要です。

 ・例えば、飲食業であれば、「大規模な宴会に対応出来る店」が過去の強みであったとすれ

  ば、これを「○○が名物の店」に切り替えていくなどを新しい強みとします。

 ・素材や産地、調理方法、提供方法等で、明確な特徴を消費者が認識しやすい強みを改めて再

  定義していくことが重要です。

 ・但し、一時的な流行を狙う様な取り組み方はあまり、おすすめできません。例えば、インス

  タ映えを意識したパンケーキを強みにすれば、時間の経過とともに消費者から飽きられる可

  能性が高くなり、経営上のリスクが高まります。

 ・「本格的な英国風のインテリアの中でパンケーキやアフタヌーンティーを楽しむ」や「ハワ

  イ料理にパンケーキを加えたセットメニュー」等、他の店舗では体験できない時間消費の楽 

  しみ方を提供することを強みにするなどの対応が考えられます。

 

STEP-3 3年間の中期事業計画を策定する

 

 ・コロナ禍以降の取り組み内容が決定したら、それを数値化し、3年間の事業計画に

   落とし込んでみましょう。

 ・飲食業であれば、例えば

①席数を従来の80%に減らす

②稼働率を従来の70%に減らす

③客単価を従来比120%に上げられる様、商品力や店内の雰囲気を向上させる

   等の新たな基準目標を十分に検討した上で、目標売上高を設定しましょう。

 ・さらに換気の改善や少人数客への対応強化を目的とした改装を行う場合、

    <減価償却費+税引後利益=キャッシュフロー>

が借入金の返済原資であることを盛り込んだ事業計画を最低3年、できれば、

5年をベースに策定し、支援機関や金融機関と相談しながらすすめていくこと

が望ましいと判断されます。

 ・環境変化への対応は大変ですが、自社の新たな成長機会と捉えることが重要です。

 

  皆様の事業の今後の発展を心より祈念申し上げます。

 


執筆者のご紹介

中小企業診断士 赤部佳夫(あかべ・よしお)

 

ショッピングセンター・小売・飲食・サービス業における出店調査や顧客アンケート調査、顧客満足度調査等の実施。及び調査結果に基づく経営戦略の策定支援、改善のための現場指導や階層別研修の実施。NPO等ソーシャルビジネス企業の経営改善指導の実施。

  1. 創業支援業務
  2. 企業の事業戦略
  3. 小売店の店舗診断

有限会社 実践マーケティング研究所

〒563-0022 池田市旭丘3-3-29

TEL 072-762-3466


皆様へお願い

このコラムをご覧になって、専門家にお電話いただく際には、「『My法務コラム』を見て電話した」とおっしゃっていただけると、スムーズです。

宜しくお願いいたします。

 

 

 

 

 


こうべ企業の窓口

お問い合わせ先: 078 - 891 -6115 (平日9:00~18:00)

事務局: 〒657-0027 神戸市灘区永手町1丁目4番18号 大西ビル2階 オネスト社労士事務所内