WITHコロナ 事業継続力強化計画を作りましょう


中小企業診断士 寺田 茂樹 (寺田コンサルさん 代表)

 新型コロナウイルス感染症の蔓延で中小企業の皆様は、苦しい経営を強いられています。近年の自然災害では、東日本大震災や熊本地震、岡山県や熊本県での水害などが多発しました。東海・東南海・南海地震の発生確率は、今後 30 年以内に 80%以上の確率で発生すると言われています。驚くべき高い確率です。近年は、ICT※1の進展によるサプライチェーン※2の高速化と効率化の実現で、この分断の影響がますます大きくなっています。これらの災害に見舞われるとヒト、モノ、カネ、情報の経営資源の需給バランスがくずれ、経営に重大なリスクを及ぼしています。これらのリスク管理のために、事業継続力強化計画を作成しましょう。この事業継続力強化計画は、「自然災害等による事業活動への影響を軽減することを目指し、事業活動の継続に向けた取組を計画するもの」とされます。他の計画に比べて比較的簡単に作成でき、作成のメリットが多くあります。特に小規模企業の皆様は、前向きに作成を考え、危機に強い柔軟な企業を目指しましょう。

 

1.事業継続力強化計画と事業継続計画(BCP)との違い

 

 事業継続力強化計画は、他の事業継続計画(BCP)※3よりも簡易(A4 紙 5 枚程度)であり、効果的な計画が作りやすく、計画策定のみで申請が可能です。この計画は、「できる」でなく、企業の実情に合った取組みの「やる気」が、認定支援されます。この計画は、事業継続計画(BCP)作成への初期ステップと位置付けられますが、小規模企業では、この計画のみで役割を果たします。計画の内容は、事業継続力強化の必要性の認識、脅威と発生時の被害発生の認識、必要な事前対策の抽出と実施計画策定、初動対応体制と行動プロセスの明確化です。緊急事態発生時における初動としての内容や手順を考えることを重視します。

 

※1 情報通信技術(Information and Communication Technology の略)とは、通信技術を活用したコミュニケーションを指します。情報処理だけではなく、インターネットのような通信技術を利用した産業やサービスなどの総称

※2 サプライチェーンとは、商品や製品が消費者の手元に届くまでの、調達、製造、在庫管理、配送、販売、消費といった一連の流れのこと

※3 事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan の略)とは、企業が緊急事態(自然災害、大火災、テロ攻撃等)に遭遇した場合、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法・手段などを取決め、文書化したもの

 

 一方、事業継続計画(BCP)は、目的が事業継続力強化計画と同じ緊急事態発生時の事前対策でありますが、初動に加え事後の業務復旧を目指します。計画内容が、重要業務と目標復旧時間の決定、事業継続戦略、業務復旧・再開対応体制と再開プロセスの明確化、継続的改善プロセスの明確化と訓練計画策定です。人手不足の中小企業にとっては、作成が複雑で取組むハードルが高く、このためにこの策定割合が低迷しています。

 

 下図は、事業継続力強化計画と事業継続計画(BCP)の策定範囲を示しています。事業継続力強化計画の策定範囲(破線で囲った範囲)は、事象発生前の事前対応と事象発生直後の事後対応の範囲となります。一方、事業継続計画(BCP)の策定範囲は、業継続力強化計画の策定範囲に加えて、元の操業度近くまで戻す事後対応範囲となります。

 

 

 

 

2.事業継続力強化計画認定制度

 

 この事業継続力強化計画認定制度は、中小企業が策定した防災・減災の事前対策に関する計画を、国(経済産業大臣)が認定する制度です。認定を受けた中小企業は、税制優遇や金融支援、補助金審査時の加点などの支援が受けられます。また、中小企業の事業継続力強化にあたっては、金融機関をはじめ、様々な関係者の支援が期待されます。

 

 

                   出典:事業継続力強化計画の手引き  令和 2 年 6 月 15 日版

 

 

3.事業継続力強化計画認定取得のメリット

 

(1) 従業員の安全が確保でき、操業停止の期間や損害を最小限に抑えかつスピード感をもって復旧を実現できます。これは、客離れ等を防ぐ「守り」の観点だけでなく、利益拡大や人材確保といった「攻め」の観点からもメリットがあります。

(2) 税制措置:取得価格の 20%が特別償却できます。

(3) 金融支援:日本政策金融公庫の低利融資、信用保証の別枠などの支援を受けることができます。

(4) 予算支援:ものづくり補助金等の一部の補助金等の審査で加点がされます。

(5) 認定ロゴマークの使用が可能です。

 

 


執筆者のご紹介

中小企業診断士 寺田茂樹(てらだ・しげき)

 

①大手鉄鋼会社で中小企業の製造業に相当する材料購入から製品販売までの全ての工程を経験する。②生産技術(工場運営、製造技術の開発等)、生産管理(需給管理、品質・コスト・納期の管理等)を経験する。③経営診断、経営戦略、予実管理、問題解決。

  1. 製造業
  2. 生産技術、生産管理
  3. 経営診断、経営戦略

寺田コンサルさん

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