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企業間決済の革命「電子記録債権」とは

CFP 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 船津正明(船津正明FP事務所)

1)電子記録債権の誕生の経緯

電子記録債権は、中小企業等事業者の資金調達の円滑化等を図ることを目的に、電子記録債 権法(2008 年 12 月施行)により創設された、新しい類型の金銭債権です。電子記録債権は、 手形・指名債権(売掛債権等)の問題点を克服した新たな金銭債権です。電子記録債権の発 生・譲渡は、電子債権記録機関の記録原簿に電子記録することが、その効力発生の要件です。 電子記録債権は、売掛債権等の指名債権のデメリットおよび手形のデメリットを解消し、こ れらに代わるものとなることが今後期待されています。

 

2)電子記録債権の特徴

電子記録債権は、手形・売掛債権を単に電子化したものではありません。電子記録債権が成 立するには、指名債権と同じように当事者同士の意思表示と国から指定を受けた電子債権 記録機関に請求して電子記録を行う必要があります。従って、当事者同士の意思表示だけで は成立せず、電子債権記録機関が管理する電子データに記録されて初めてその効力が発生 します。いったん発生した電子記録債権を譲渡する場合も、発生時と同じ記録機関の記録原 簿にデータが追加で書き込まれることでその効力が発生します。そのため、債権の存在や帰 属の確認が簡単で、しかも一般的な指名債権のような二重譲渡のリスクがありません。また 電子記録債権は電子データを利用するので多くの情報を記録できます。これは紙を利用す る手形よりも格段に優れています。

手形は手形法という法律によって、券面に記載される内 容や文言が定められていますので記載できる文字数にも制限があります。

これに対して、電 子記録債権では、法律上「発生記録において必ず記録しなければならない事項」が8つあり、 さらに「任意的に記録できる事項」が16も認められています。この結果、電子記録債権は より多くの情報を記録できるので色々なタイプが作成できるのです。

 

3)電子記録債権と他の債権との相違点

まず手形との違いですが、電子記録債権は電子データとして記録・管理されているので手形 のような盗難・紛失のリスクがありません。また、印紙税も不要です。支払金額も手形のよ うに券面に記載された総額のままでなく、必要な分だけ分割したり割り引いたりすること が可能です。

指名債権はもっとも馴染みのある債権で、債権者を特定しているもののことを いいます。当事者同士の意思表示があれば成立し、行使にあたって契約書などは必要ありま せん。指名債権の一種でもある売掛債権も財産の一つですので、原則として動産や不動産の ように売買することや、債権を担保にお金を借りることもできます。しかし、債権者が異な る複数の第三者に債権を譲渡することや、担保に入れたりする可能性もあります。これを債 権の二重譲渡といい、トラブルになることが多いのです。これ以外にも、債権譲渡にはさま ざまな問題があるので、最初から債権の譲渡禁止特約を付けることが多くなっています。

こ れに対して電子記録債権は電子債権記録機関の記録原簿に電子データが記録されることが債権譲渡の要件となっているので記録の日時や内容も明確です。また、債権者も電子債権記 録機関に記録されているので、間違えて振り込んでしまったり、二重譲渡が発生したりする ことはありません。

 

4)電子記録債権の問題点

電子記録債権の現在の規程では、記録する時に債権額や支払期日が確定していることが必 要です。したがって将来発生する将来債権の譲渡などには使えません。もうひとつの注意点 は、現在5つあるいずれかの電子債権記録機関に利用者登録をしなければなりません。電子 記録債権の債権者、債務者はもちろんですが、譲渡人もその記録機関に登録しなければ債権 を譲り受けることができません。これは制度上、発生記録をした記録機関でなければ、譲渡 記録ができないことが原因です。複数の記録機関があり、現在はそれぞれの記録機関同士で の互換性がないので、利用目的に応じて記録機関を使い分けなければいけません。これは、 他の債権とは大きく違う点で普及を遅らせている大きな原因となっています。また、従来の 売掛債権から決算期の途中での電子記録債権への変更は経理処理も変更になり混乱する場 合があります。

 

5)電子記録債権の現状と今後について

現在電子記録債権は、急速に普及しつつあり、市場規模は14兆円程度まで拡大しています。 5年後には60兆円程度まで拡大するのではないかと期待されています。これは現在の日本全国の売掛金残高200兆円の30%に相当する規模です。なお、現状における電子記録 債権の利用は、大手自動車メーカーや大手建設会社が中心です。しかし、今後は市場規模の 拡大に伴い中小零細企業における利用や担保的な利用の拡大が期待できます。これから日 本は少子高齢化が進み、労働人口もますます減少していきます。この問題を解決するために は労働生産性の向上は必須となります。中小企業にとっての生命線である企業間決済にお ける省力化が可能になる金融サービスである電子記録債権の利用を検討するべき時期に来 ているのではないかと思います。

船津正明 FP 事務所

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