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労働災害とライプニッツ係数

弁護士 森本 圭典(かなえ法律事務所)

1 はじめに

 民法の改正により、法定利率が年5%から年3%に引き下げられました。

 実は、この法定利率の改正が、労働災害事件に影響をあたえるのです。

 

2 ライプニッツ係数とは

 ライプニッツ係数とは、交通事故などの人の身体に関する損害賠償請求において、将来、受け取るべき逸失利益などを一時金に換算するために用いられるものです。

 例えば、交通事故によりAさん(37歳)(年収500万円)が亡くなってしまったとします。Aさんが生きていれば、67歳ぐらいまでは働くことにより給料を得ることができたといえます。しかしながら、Aさんは交通事故により働くことができなくなったため、加害者は、Aさんが将来得るはずであった給料を賠償する義務を負います。

 厳密に考えるのであれば、給料は将来に発生するものなので、加害者はAさんの遺族に対して、毎年500万円ずつ支払うことになります。

 しかし、それでは事件が解決するまで時間がかかってしまいますし、遺族としても、いつまで加害者が支払ってくれるのか不安になるため、通常、加害者は、被害者が将来得るはずだった収入を計算し、一括で支払います。

 ただし、ここで問題となるのが、将来支払うべき金銭の価値です。Aさんの例ですと、加害者が、本来は30年後に支払うべき500万円を、いま支払うのであれば、いくらになるのかということです。

 民法は法定利率を3%と定めていることから、年3%での運用が可能であると考えます。500万円を年3%の利率で運用すると、30年後には約1200万円になります。

 Aさんの遺族が、30年後の500万円を現時点で受け取ると、運用することによって30年後には約1200万円にすることができます。とすると、30年後に500万円を受け取るはずが、実際には約1200万円も受け取ることになり、損害を上回る金銭の支払いを受けることになります。そこで、30年後の500万円の価値を現在の価値に引き直すことができるライプニッツ係数が必要となるのです。

 ライプニッツ係数は法定利率を基に算出されているため、30年のライプニッツ係数を比較すると、年利5%の場合のライプニッツ係数は15.372、年利3%のライプニッツ係数は19.600となります。

 

 年利5% 30年のライプニッツ係数 15.372

 年利3% 30年のライプニッツ係数 19.600

 

 給料の3割が生活費で使われると考え、Aさんの逸失利益を計算すると、法定利率が5%から3%に変わったことによって、Aさんが一時金として受け取ることができる逸失利益は、約1500万円も増えることになります。

 

 年利5% 500万円×0.7×15.372=5380万2000円

 年利3% 500万円×0.7×19,600=6860万0000円

 

3 労働災害との関係

 法定利率が引き下げられたことにより、逸失利益の損害額が増額することになります。また、改正民法では、3年毎に法定利率が変動することを定めておりますので、さらに法定利率が下がることにより逸失利益の損害額が増額する可能性があります。

 労働災害により、従業員が死亡したり、怪我による後遺障害が残ってしまった場合、会社が損害賠償責任を負うことがあります。

 労働者災害補償保険に加入していても、逸失利益について全て補償されるわけではありません。

 労働災害により会社が支払う損害賠償額が増える可能性がありますので、これまで以上に労働災害の防止に努める必要があります。 

執筆者ご紹介

弁護士 森本圭典(もりもと・けいすけ)

 

弊所は平成元年に開設してから地域に根ざしたリーガルサービスを提供して参りました。生活のなかで生じる様々な問題に取り組み、取り扱った事件の数は多数にのぼります。

  1. 個人の民事・家事事件
  2. 民事事件
  3. 遺産相続

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