令和4(2022)年9月1日株主総会資料の電子提供制度(電子提供措置制度)が始まりました(会社法325の2以下)。上場企業はこの制度の利用を強制されますが、ベンチャーや一定規模の中小企業においても利用を検討するメリットがありますのでご紹介します。
電子提供制度は、次のとおり整理できます。
これまで印刷した書類で送付する必要があった株主総会参考資料を送付する必要がなくなります(会社法325の2以下:電子提供措置)。
なお、招集通知自体は書面で送付する必要がありますが、株主から個別に同意を得ればこの招集通知自体もメール等で行うことができます(会社法299Ⅲ)。
株主総会参考書類等の印刷や郵送のための作業時間・作業コストが削減できます。上場企業の場合、印刷して発送する場合には数千万円から1億円以上のコストが掛かっているになるということです(株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会事務局提出資料~招集通知関連書類の電子提供~(原則電子化に向けた検討を中心に)/経産省/H28.2.2/8頁/最終アクセス2022.09.18。)
中小企業の場合、どの程度のコスト減になるのかは、各社バラバラでしょう。株主数や議案数の多い中小企業においても結構コストが掛かっているのではないでしょうか?「人件費+郵送費又は外注費」この削減に繋がる可能性があります。
結果、株主が株主総会資料の内容を十分に検討する期間が確保され、株主総会への出席者が増える効果も期待できます。
外部からの投資を呼び込みたい企業様にとっては「(法務も)最先端であること」をアピールするチャンスです。
招集通知の発送時期は、本来、
であるところ、電子提供措置を採用した場合には、総会の2週間に通知発送が必要になります(会社法325の4Ⅰ)。
電子提供措置をとる旨の定款変更総会決議が必要になります。急ぎ導入したい場合には、臨時株主総会を招集して行なう必要がありますが、そうでない場合には定時総会で決議し、来年の定時総会から電子提供措置を導入すれば余分に総会を招集する必要はありません。また、電子提供措置をとる旨は登記事項にもなる(会社法911Ⅲ⑫の2)ので、登記コスト(実費3万円+司法書士報酬=10万円程度)が必要になりますが、一度変更すれば良いだけですので、それほど負担にはならないでしょう。
⑴電子提供制度は種類株主総会にも準用されます(会社法325の7)。
⑵一般社団法人、医療法人等の法人でも、電子提供制度を導入できます。
株主も多いし、株主総会資料も分厚いし、毎年定時総会シーズンには気が重たくなる企業様。一度、これまでの印刷費・発送費・人件費を算出して、電子提供措置の導入コスト・運用コストと比較してみてください。思わぬ経費節減ができるかもしれません。
外部からの投資を呼び込みたいベンチャー企業にとっては「(法務も)最先端」をアピールするチャンスです。是非導入をご検討ください。
司法書士 佐藤大輔(さとう・だいすけ)
一般的司法書士業務+事業承継・信託・従業員持株会・フランチャイズシステム・M&A等のプラン設計・実行。社長・従業員の法律相談。140万円以下の民事訴訟・示談代行。少額裁判助成制度(兵庫県司法書士会)の利用実績は当事務所が第1位。
あなたのまちの司法書士事務所グループ所属
あなまち司法書士事務所
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